研究課題/領域番号 |
25870746
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小澤 寛晃 中央大学, 理工学部, 助教 (50464152)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ルテニウム錯体 / グラフェン / プロトン応答性 |
研究概要 |
エネルギー問題は21世紀に与えられた地球規模の大きな課題の一つである。化石エネルギーや原子力エネルギーに頼らないクリーンなエネルギー源が求められている。全固体型の畜電池は次世代エネルギーを担うものとして研究対象の一つであり、固体型燃料電池などに関して多くの電極材料が日夜研究開発されている。燃料電池では正・負極を分離するプロトン伝導体が重要な役割をする。最近、多孔性金属錯体などの有機-無機ハイブリッド系のプロトン材料を創製に成功している。しかしながらこれらの系ですらプロトン伝導サイトは多孔性金属錯体中に導入された1種類の置換基(カルボン酸もしくはリン酸)のみで行われている。本研究ではグラフェンなどのナノ炭素材料を基盤としたpKa傾斜を持つヘテロ接合型プロトン伝導体を創製する事を目的とする。酸化グラフェン、金属錯体、有機物の積層構造を作製し、各層を形成する3種のユニット材料にpKaの異なるホスホン酸(pKa=2~3)、カルボン酸(pKa=3~4)、イミダゾール(pKa=6~7)を導入し、pKa勾配を持たせる事でプロトン移動を面内だけでなく断面方向にも選択的に効率的なプロトン移動を起こし、プロトン移動に方向性を持たせる。従来報告されているプロトン伝導体はプロトン移動のメカニズムや効率化のみに焦点が当てられており、プロトンの流れに方向性を持たせた材料設計がなされてこなかった。酸化グラフェンなどの層状ナノ炭素材料を用いることで新たなpKa傾斜をもつプロトン伝導材料が創製できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ピレンアンカー基を有するプロトン応答型ルテニウム錯体とホスホン酸を有するピレンなどのプロトン伝導体の構成ユニットの合成に成功した。ピレンアンカー基を有する金属錯体はグラフェンやカーボンナノチューブ、HOPGなどへの吸着挙動をあきらかにした。またピレンアンカー基を有するルテニウム錯体について、ピレンアンカー基の数を変えたところ、数に応じて吸着力が大きくなることが明らかとなった。さらにPH応答性を評価したところ、pHを酸性から塩基性に変化させたところ、酸化還元電位が低電位側にシフトすることが明らかとなった。さらにプロトン共役電子移動について詳細を明らかにするために、プルベーダイアグラムの作製を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
交互積層構造体の作製を行う。まず固体基板もしくは電極上にナノチューブに担持した有機分子を積層させる。次に参加グラフェンを積層させる。最後にナノチューブに担持した金属錯体を積層させ、目的の構造体を作製する。構造体はAFM、SEMやTEMを用いてその構造を観察し、XRDなどのX線による構造解析を行うことで詳細な構造を明らかする。加えてFT-IRやXPSを用いて置換基の有無や含有元素を明らかにする。 また、交互積層構造体の物性評価としてサイクリックボルタンメトリー(CV)測定、固体化の電気伝導度測定、プロトン伝導度測定(インピーダンス測定)を行う。これらを行うとこにより層構造やpKa勾配の大きさ、順序などを相対的に評価し、プロトン伝導に適した構造体の作製の知見を得る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度に予定していた炭素材料の積層の作製のための材料を購入予定であったが、現段階での実験の進行状況から購入を控えた。さらに学会での発表を控えたためである。 当初の計画に加え、次年度に購入を控えた、試薬、材料の購入するとともに、学会での発表を行う。
|