研究課題/領域番号 |
25870747
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
南 安規 中央大学, 研究開発機構, 助教 (60613362)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機化学 / 不活性結合活性化 / パラジウム / 不飽和結合 / ビアリール / イソシアナート / 挿入 / 環化 |
研究実績の概要 |
今年度は交付申請書に記載したとおり、有機分子内の安定結合、炭素-水素結合を金属触媒と不飽和結合配向基により活性化し、新たに炭素-炭素結合を形成する反応を開発した。結果の例を以下に記す。 アルキニル炭素上にかさ高いトリイソプロピルシリル (TIPS)基を有するアルキニルアリールエーテルといろいろなイソシアナートを酢酸パラジウム、トリシクロヘキシルホスフィン配位子、添加剤に酢酸亜鉛を用いて反応させると、アルキニルアリールエーテルのオルト位炭素-水素結合を選択的に活性化し、イソシアナートへの位置選択的挿入、つづく分子内挿入反応により、固体生成物のベンゾオキサジノン類を得た。本生成物に365 nmの波長のUVを照射すると、固体状態でのみ良好な蛍光発光を示し、生成物内の置換基を工夫することにより、青色から緑色の光を調整することができる。生成物の環状骨格内に電子不足のエテニルアミド部を有することと、分子間相互作用を抑制するかさ高いTIPS基の存在が顕著な固体発光を促していると理解している。ケイ素イソシアナートだけでなくケテンも反応に用いることができ、対応する1-クロマ-3-ノン類を得ることにも成功した。 アルキノキシ基を2位に有するビアリールを酢酸パラジウム、トリシクロヘキシルホスフィン配位子を用いて反応させると、2'位、すなわちアルキノキシ基からシグマ位の炭素-水素結合を活性化し、アルキノキシ基が分子内挿入した生成物、ジベンゾピラン類が収率よく得られた。本生成物を臭化水素で処理し、つづくブチルリチウムなどの有機金属反応剤を付加させることにより、π電子共役系高分子のモノマーとして知られる6,6-二置換ベンゾピラン類に収率よく変換できた。本反応は含酸素縮合芳香族炭化水素の合成に利用でき、実際にアルキノキシ基を二つ有するターフェニルから、縮合5環化合物へと収率よく変換できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要のとおり、研究実施計画に記載した内容は順調に達成している。合わせて、アルキニルエーテルとイソシアナートとの反応生成物が、当初は予期できなかった、固体状態で顕著な固体発光を示すことがわかり、固体発光材料の合成の新たな指針を提供することに成功した。この研究展開は、不飽和結合配向基を用いることにより発見できたと言えるものであり、本研究の可能性を大いに示していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に基づいて、アルキノキシ基を用いるアリールおよびベンジル炭素-水素結合以外の炭素-水素結合の活性化を検討する。具体的にはビニル炭素-水素結合と、最も反応性に乏しい脂肪族炭素-水素結合の活性化に取り組む。合わせて、アルキノキシ基以外のいろいろな不飽和結合を配向基に利用する研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に得られた成果は単なる反応開発にのみならず、顕著な固体発光特性や複雑な縮合芳香族炭化水素の構築に利用できることがわかった。このため、当初の計画の反応開発と並行して、新たな物性を示しうる生成物を合成し、その応用法について詳細に調べる必要が生じた。この研究により、本研究の価値を飛躍的に高まると期待している。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度より、単純アルケンや複雑なアルキン、集積二重結合化合物類を直接購入するか、必要に応じて別途合成し、アルキニルエーテルや研究の進展に応じて他の不飽和結合官能基を有する基質との反応を検討する。原料化合物に合わせて、使用する金属触媒や配位子、添加剤の購入に充てる。
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