安全な無線電力伝送の中でも、磁界共振結合を用いた無線充電に関しては、理想的に広いエアギャップ・高い最高伝送効率を実現できるため、盛んに研究が進められている。近年では、商用システムの実現方法に関しても議論が盛んに行われており、国際標準規格Qiなどではセンシングや通信機能を組み込んだ標準プロトコルが提案されている。この中で、センシングに関しては、伝送レンジにおける充電対象の存在有無を確認するために不可欠である。そこで、入力インピーダンス測定に基づくパッシブな結合係数推定および結合係数の位置依存性に着目した位置推定に関して基礎研究を進めてきた。この手法では、高周波電源やアンテナ等のハードウェアを共通化できるものであり、無線充電・センシングの同時実現と称して期待されている。本研究課題は、これらの技術を元に、(1)姿勢センシング・(2)大規模化・(3)同時実現の弊害解消などに取り組むものである。 (2)・(3)に関しては、これまでに完了しており、(2)に関しては中継アンテナを用いた配線レスなセンシング手法を提案&実験により効果検証し、(3)に関しては熱問題を抑制する温度制御法を実現した。これを受け、(1)に関して積み残しの課題に取り組んだ。具体的には、開発に成功したQ値制御可能なアンテナ(Q値制御アンテナ)を用い、結合係数の変化に応じてセンシング誤差最小となるQ値が変わるため、測定した反射係数の絶対値を最小化する誤差最小Q値への追従制御系を構築し、高精度下でのセンシングを実現した。これにより、微小結合係数(アンテナ間距離が大きい場合)でのセンシングが確かに達成された。さらに、これを送信アンテナアレイのシステムへと適用し、姿勢センシングへ利用できることを示した。また、Q値制御アンテナはセンシングのみならず通信の広域化・高性能化にも転用可能な技術であることも示した。
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