研究課題/領域番号 |
25870750
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
諏佐 崇生 帝京大学, 医学部, 助教 (20445852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核内受容体 / ER / AR / LNCaP / MCF7 / ステロイドホルモン / 性ステロイドホルモン |
研究概要 |
ヒト乳癌培養細胞を用いた先行研究において、エストロゲン受容体(ER)が本来のリガンドであるエストロゲン(E2)以外にもアンドロゲン(DHT)をリガンドとして認識するというクロストークが存在することを見出している。これを起因として本研究では、ヒト乳癌培養細胞であるMCF7細胞と前立腺癌培養細胞であるLNCaP細胞を主に用いて、ステロイドホルモンとその受容体である核内受容体との関連について、またそれらステロイドホルモン-核内受容体による標的遺伝子の遺伝子発現制御機構の解析に関連する下記の2点の研究を行った。 ①すでにMCF7細胞においてE2-ERが副甲状腺ホルモン(PTHrP)をホルモン依存的に抑制することを見出していることから、その転写抑制機構に迫るべく、その制御領域の同定をレポーターアッセイやクロマチン免疫沈降法によって解析した。その結果、PTHrPの転写開始点上流-12kbの領域にERが結合してホルモン応答に関与する候補領域を見出しつつある。この候補領域にはERのコンセンサス配列に類似した配列も観察されている。 ②前立腺癌培養細胞であるLNCaP細胞における種々のステロイドホルモンと核内受容体による転写制御の関係を、核内受容体のsiRNAによるノックダウンや、レポーターアッセイ、免疫染色やGFP融合型発現ベクターを用いた実験で調査したところ、前立腺癌での主要な核内受容体であるアンドロゲン受容体(AR)が本来のリガンドであるDHT以外にE2にもそのARの変異に依存せずに応答することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成25年度における研究計画では、「PTHrP等の標的遺伝子発現の性ステロイド依存的な抑制的制御機構の責任を担う制御領域を同定すること」を目的としていた。この研究課題において平成25年度では、MCF7細胞にけるERによるPTHrP 遺伝子発現抑制機構に対してレポーターアッセイやクロマチン免疫沈降法を行い、PTHrPの転写開始点上流-12kbの領域にERが結合してホルモン応答に関与する候補領域を見出しつつあり、この候補領域にはERのコンセンサス配列に類似した配列も観察されていることから、ある程度の達成度は見込まれていると考えられる。しかし3Cアッセイ実験の着手には遅れが見られ、またChIP-on-ChipやChIP-seqなどの網羅的なスクリーニングによる更なる研究シーズの探索も計画に加えていたがこれは未だ行われていない点は不十分であるところである。 一方、LNCaP細胞において、ARが本来のリガンドであるDHT以外にE2に応答するという、MCF7細胞で観察された先行研究と鏡像関係になるような現象の存在を明らかにした。以前よりLNCaPのARは点変異が発生することでそのリガンド特異性が失われてしまい、これが前立腺癌のホルモン抵抗性に関係していると考えられてきたが、本実験結果はLNCaPで発現するARのE2への感受性は、受容体の変異に依存しないでも成立することを示す、細胞特異的な新規機構の存在を示すものと言え、その分子機序の解明に興味が持たれる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で記述した①と②の研究を投稿論文として発表する。またそれと並行してMCF7細胞やLNCaP細胞でのステロイドホルモン依存的な転写抑制機構の更なる解明のために、プロテオミクスやマイクロアレイ、ChIP-on-chipやChIP-seqなどの大規模スクリーニングの導入による転写複合体の解析や、新規標的遺伝子とその制御領域の探索を行うことで、その全容の解明を行うことことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では細胞培養や分子生物学的な実験を主に行い、本助成金を満額使用するほど支出は発生しなかった。また、平成26年度に予定するマイクロアレイ、ChIP-on-chip、ChIP-seqなどの高額な実験を行うために当該助成金を次年度に繰り越した。 本研究の申請書や、今後の研究の推進方策に記載したように、平成26年度に予定するマイクロアレイ、ChIP-on-chip、ChIP-seqなどの高額な実験を行うために使用する予定である。
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