本研究では、伝承の現場において多く活用され、且つ歴史的にも様々に作成されてきた民俗芸能の音楽に係る記譜資料について、複数の現地調査に基づく比較検証・分析を通して、伝承活動といかなる関係にあるかを明らかにした。具体的には(1)当該民俗芸能で使用あるいは伝承者が保有する記譜資料の状況と(2)当該伝承コミュニティ自体における記譜資料の位置づけについて調査を行い、以上の基礎情報を踏まえて、(3)記譜資料の活用の状況について、実際の伝承過程の観察を通し、伝承の視点から記譜資料の役割の分析を行った。あわせて、既存の記譜資料の活用の方法論と伝承活動に有効な記譜理論の構築に向けた具体的視座についても検討した。
|