研究課題
認知症患者や脳梗塞後遺症患者などは十分な口腔清掃ができず,口腔内衛生状態の悪化している者が多く見られる.そのなか不顕性誤嚥を生じているが肺炎の既往のない症例が見受けられる.これは抗菌ペプチドなどによる生体の防御反応が関係していると考えられるが,その発現量に関与する因子は明らかではない.本研究は,全身疾患や薬物などの影響を受けていない健常者における唾液中βディフェンシン量に影響を及ぼす因子について明らかにすることとした.対象は健常有歯顎者22名(男性14名,女性8名,平均年齢29±2歳)とした.吐出法による安静時唾液量の計測後,舌苔付着程度を算出した.採取した唾液よりβディフェンシン量をELISA法にて測定した.総嫌気性菌数はブルセラHK寒天培地に唾液を滴下し, 1週間嫌気培養後CFU計測を行った.最終の口腔清掃からの経過時間,最終の食事からの経過時間,性別,喫煙習慣の調査は質問紙法で行った.βディフェンシン量,総嫌気性菌数,安静時唾液量,舌苔付着程度を50パーセンタイルで2値化後,βディフェンシン量を目的変数,総嫌気性菌数,安静時唾液量,舌苔付着程度,最終の口腔清掃からの経過時間,最終の食事からの経過時間,睡眠時間,性別,喫煙習慣を説明変数としたロジスティック回帰分析後,ステップワイズ法にて解析を行った(α=0.05).唾液中βディフェンシン量と総嫌気性菌数や睡眠時間との間に正の相関関係が認められた.ロジスティック回帰分析では総嫌気性菌数が唾液中βディフェンシン含有量に影響を及ぼす因子として選択された.βディフェンシンは初期防御に関連する抗菌ペプチドの一つであることから,口腔内細菌数の増加に伴う抗菌活性により増加したと考える.また,睡眠時間について,睡眠中は交感神経の緊張がとれ副交感神経が働き,免疫細胞の働きが活性化することから相関関係が認められた一因として考える.
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