研究初年度に計画していたWt1-GFPマウスに関連した実験はマウスの生育不全で半年後に供給されたことから当初計画していた通り進んでいなかったため、本年度はその研究の続きから解析を行なった。Wt1-GFPマウスを用いて発生中の心外膜原基の移動の観察を行なった結果、右に偏って発生した心外膜原基は左に向かって増殖、移動する様子が観察された。このことから心外膜原基が右部から左部に向けて移動を行ない、横隔膜形成に必要な細胞が供給される可能性が明らかとなった。 ニワトリ胚を用いて左右軸を乱した結果、心臓の逆位が観察されていたが膜形成に関連しては異常が認められないことが明らかとなった。このことから、左右軸の乱れは先天性横隔膜ヘルニア(CDH)と直接関連しない可能性が考えられた。このことから「計画5」で行なう予定であったマイクロアレイの実験を取りやめた。現在はWt1陽性細胞に直接影響を与える因子の特定を遺伝子カスケードなどから検証を行ない、候補となる分子をいくつかあきらかにした。 nitrofenを用いてCDHモデルの作成が可能となったことからWt1-GFPマウスを用いてnitrofenによる細胞移動の変化を解析した。その結果Wt1陽性細胞の分布が乱れている可能性が示唆された。 今回の研究でCDHの原因の最も重要な細胞群は体軸形成期に右側に偏って発生してくる心外膜原基である可能性を見いだしたことから、一定の成果を上げたと考えられる。
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