研究課題/領域番号 |
25870756
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
平尾 将剛 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (90624073)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Cubature公式 / 作用素型cubature公式 / Laplace作用素型cubature公式 / 最適計画 / 回転可能計画 / ユークリッド空間上のデザイン / 球面上のデザイン |
研究概要 |
初年度の研究目的は,少ない点の個数で構成される多重同心円上の積分に対するcubature公式の構成法の提案であった. Shamsiev(2006)は,通常のcubature公式ではなくLaplace作用素を考慮したcubature公式に対して幾つかの点の少ないcubature公式の構成法や具体例を提示している.そこで我々はShamsievのアイデアを一般化し,通常のcubature公式から「作用素型cubature公式」へと概念を拡張した.その下で偶数次数のcubature公式の構成点数に関する下界評価式(Stroud下界評価式)の一般化や,Shamsievの結果を包含するLaplace作用素型cubature公式に対して構成点数が最小となるcubature公式を提示すること等に成功した.この研究成果については,現在,国際学術誌に投稿中である. また,2年度目の計画の一部である「Hirao-Sawa-Zhou(2011) の有限群の軌道を用いた cubature 公式の構成法の改良」についても研究の進展があった.「コーナーベクトル法」と呼ばれる新たな手法,及び古典的組合せデザイン等を用いた構成点を少ない数の構成点に再構成する手法を提案することにより,6次の多重同心球面上のcubature公式の構成法を与えた.さらに単位球上を実験領域とする3次のある統計的最適性をもつ実験計画の構成法の提案にも成功した.この研究成果については,現在,国内機関誌に論文1本を掲載済,また国際学術誌に論文1本を掲載予定である.さらに,この結果については幾つかの会議において講演を行い,中でも日本応用数理学会において第10回若手優秀講演賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は,少ない点の個数で構成される多重同心円上の積分に対するcubature公式の構成法を提案することであった.この目標に対し,従来のcubature公式の概念を包含する「作用素型cubature公式」という新たな概念を提案することで,偶数次数における必要な点の個数に関する下界評価式を与え,それを達成する点の少ないcubature公式を構成することに成功した.さらにはそのクラスの一部である「almost tight」と呼ばれる構造を持つcubature公式の構成や高次数下における非存在性を示すことにも成功している. 作用素型cubature公式の研究については,特に重要なLaplace作用素型cubature公式に焦点を絞り,その多次元化,及び高次数化した場合おける検証が今後必須だと考えており,研究の進展も十分期待される. また,2年度目の計画に挙げていた「Hirao-Sawa-Zhou(2011) の有限群の軌道を用いたcubature公式の構成法の改良」についても一部進展があり,今回提案したB型Weyl群の軌道に着目した「コーナーベクトル法」,及び古典的デザイン理論を組み合わせた「構成点数をスリム化するアプローチ」は,B型Weyl群以外の群に対しても同様に適用できると考えている.特にこれらの方法は代数的組合せ論,数値解析,及び実験計画法のそれぞれの視点で興味深い結果である.また,これに関連した研究内容で1本の査読付論文が国際学術誌に掲載予定であり,1本の査読無論文国内機関誌に掲載されたことも強調しておく.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,研究実績の概要にも挙げたように「少ない点の個数で構成される多重同心円上の積分に対するcubature公式の構成法」に関して進展があった一方で,2年度目の目標であった「有限群の軌道を用いた構成法の改良」に関しても進展があったのだが,2年度目の研究計画に大きな変更はない. 当初の計画通り有限群の軌道を用いた構成法の改良を「コーナーベクトル法」をさらに進展させることで解決を図る.特に現在,B型以外のWeyl群の軌道に着目し,それらで構成できる多重同心球面上のcubature公式や,最適計画の次数の限界等についての調査をはじめている段階であり,今後の更なる進展が期待される.また軌道の初期点の取り方により,次数の高いcubature公式が構成できると予想しているが,今後,先ずは計算機を用いて幾つかの例を探索し,続いてその一般的な構成法を与える. また,初年度の「作用素型cubature公式」に関する研究の中で生じた幾つかの問題に対しても追加で取り組む.先ずはオーダー1の場合のLaplace作用素の場合にのみ焦点を絞ることで,多次元化,及び高次数化した場合おける存在性について調査する.まずは計算機を用いて幾つかの例を探索し,続いてその性質を段階的に明らかにする.
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