最終年度の研究目的のひとつは,これまでに提案したコーナーベクトル法を拡張した場合におけるcubature公式,および最適実験計画の構成法の継続調査であった.これに関しては,超八面体の等分点を用いた方法により,多重同心球面上のcubature公式の構成,および3次D最適計画の新たな構成法を与えた.またこの方法で得られる単位球上のcubature公式の幾つかは既知のcubature公式より少ない点で公式をなしていることも分かり,このことはヒルベルト恒等式,バナッハ空間の等長埋め込みにも新たな視点を与えるものである.この結果に関しては,現在,論文を投稿準備中である. また,もうひとつの目的として,Brauchartらにより提案されたQMCデザインの確率的な構成法についても取り組んだ.代表的な行列式点過程のひとつである球面アンサンブルから得られるランダム点配置はQMCデザインをなすこと示したことは,今後の確率点過程を用いた数値積分法の研究における新しい視点を与えることを確信している.現在,論文を投稿準備中である.さらにニューサウスウェールズ大学のI. Sloan教授,R. Womersly教授らとも連絡を取り合い,今後も継続して調査を行う予定である. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては,主にコーナーベクトル法(およびその拡張)から,より多くのcubature公式,および最適実験計画が得られたことである.また最終年度実施した研究により,当初は予見していなかった確率論的構成法の萌芽も得ることができた.今後はこれらの知見を基に,より効率的な構成法の開発及びそれらの応用を調査していきたいと考えている.
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