【腎移植者における免疫抑制剤への服薬アドヒアランスの実態調査】 インターネット調査を実施し、腎移植経験者219名から回答を得た。年齢48.3±9.5歳、移植時41.7士11.2歳、生体移植が88.7%を占めた。Basel Assessment of Adherence to Immunosuppressive Medication Scale(BAASIS)により、94名(42.7%)がアドヒアランス不良群となり、服薬時間のずれが大半を占めた。多変量解析の結果、移植前の透析期間の短さ、2回目以上の移植歴、仕事をしていること、免疫抑制剤に関する医療者の説明への満足度が低いこと、飲み忘れ時に対応を相談できる医療者がいないと捉えていることがアドヒアランス不良に関連する要因として抽出された。アドヒアランス不良群はさまざまな生活状況における服薬に対するセルフエフィカシーが低かった。 【腎移植者からみた服薬・医療者との関係に関するインタビュー調査】 腎移植経験者を対象に、フォーカスグループインタビューを実施した。アドヒアランス不良の危険因子とされる、治療関連因子、医師―患者関係因子、環境関連因子について、移植経験者の視点から明らかにすることを目的とした。録音したインタビュー内容を逐語に起こし、質的分析を行い、移植者の視点から服薬行動を阻害する要因・促進する要因を整理した。
アドヒアランス不良は、臨床的に大きな問題となるが、診療場面では明言されにくい。匿名性の高いインターネット調査により、本邦における腎移植者のアドヒアランスの実態、アドヒアランス不良に関連する要因、服薬不良の生じやすい状況が明らかになった。さらに、インタビュー調査を通して、移植者の視点から服薬促進の課題が整理された。本研究の成果は、服薬アドヒアランス向上のプログラム構築の基盤となりうるものと考える。
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