研究課題
これまでADAMTS9 /gon-1遺伝子の発現を抑制することでタンパクの分泌が抑制され、ERの形態に変化が見られ、ERストレスが負荷されることを見いだしていた(発表済み)。ADAMTS9は2型糖尿病のリスク遺伝子の1つである可能性が示唆されているため、ADAMTS9がインスリンの分泌あるいはインスリン受容体の細胞膜への輸送メカニズムなどに関与している可能性を検討した。線虫C.elegansをモデル生物として用い、FOXO/DAF-16の局在やインスリンの分泌を観察した。FOXO/DAF-16は、Wild typeでは細胞質と核に局在しているが、gon-1 のknockout株では核に強く局在するようになっていた。線虫のインスリンはWild typeでは神経から分泌され、神経細胞内ではほとんど観察されないが、gon-1 knockout株では神経内に蓄積していた。これらのphenotypeはgon-1のプロモーターの下流でGONドメインを発現させることによってレスキューした。線虫において、インスリンシグナルはdauer形成と寿命に影響を及ぼすことが知られていることから、gon-1 のknockout株を用いてdauer形成と寿命を測定し、gon-1 mutantではdauerになりやすく、また、寿命が伸びることが見出された。以上の結果より、線虫C.elegansにおいてGON-1は、インスリン分泌細胞においてインスリンの分泌に関与し、末梢組織においてインスリンシグナル伝達に関与していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の結果を論文として投稿中であるため、概ね順調に進展していると判断した。
ほ乳類の培養細胞を用いて、ADAMTS9がβ細胞におけるインスリン分泌や末梢組織におけるインスリンシグナル経路にどのように作用しているか検討する。インスリン分泌細胞としてはINS1を使用し、末梢組織由来の培養細胞としては、筋細胞に分化させたC2C12や脂肪細胞に分化させた3T3-L1、肝細胞由来のHepG2を用いる。INS1を用いsiRNAを投与することによりADAMTS9の発現を抑制し、高グルコース刺激によりインスリンの分泌顆粒の挙動がどのように変化するかを検討する。また、末梢組織由来の培養細胞では、ADAMTS9の発現を抑制することによりインスリン刺激に対する応答性が変化するかを検討し、さらに、それぞれの末梢組織ごとに現れる表現型と2型糖尿病の病態との関連を検討する。
線虫の培養が予定よりもスムーズに行われ、使用した消耗品量が少なかったため。
培養細胞用のスライドチャンバー用の費用に充てる。培養細胞INS1を培養するためには、ポリ-L-リジンコートをしたスライドチャンバーを用いなければならないため、そのための費用にする。また、細胞培養用の血清、抗体、試薬、ウエスタンブロット用の各種試薬に充てる。
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