研究課題
若手研究(B)
これまでに臨床サンプルを用いた解析からephrin-A1の高発現と癌患者の予後不良や癌の悪性度と正の相関を示すことが報告されてきたが詳細な分子機構は不明であった。癌患者の予後不良の一因となる転移に着目し、転移におけるephrin-A1の機能解析を行った。ephrin-A1は細胞膜に局在する膜タンパク質である。しかし、健常マウスの血清中ではほとんど存在しない分泌型ephrin-A1が顕著に担癌マウスの血清中で増加していることが明らかとなった。分泌型ephrin-A1を尾静脈より投与し、人工的に血中濃度を上昇させると肺血管の透過性を亢進させた。また、肺血管の透過性の亢進と同時に腫瘍細胞の肺への動因が亢進していることが明らかとなった。よって、担癌マウスに分泌型ephrin-A1の中和抗体を投与し、肺転移に対する効果を検討した。その結果、肺転移は対照群と比較して顕著に抑制された。さらに、原発巣においてephrin-A1の発現を誘導する物質として炎症性サイトカインのS100A8を同定した。In vitroにおけるshRNAを用いたS100A8によるephrin-A1の発現誘導の解析結果からS100A8はTLR4を介してephrin-A1の発現を誘導していることが明らかとなった。これらの結果をまとめると、原発巣でS100A8がephrin-A1の発現を誘導し、ephrin-A1はADAM12によって切断され細胞膜結合型から分泌型へとなり、肺転移を促進することが考えられる。現在、ADAM12を阻害する小分子化合物の肺転移における効果を検討している。
2: おおむね順調に進展している
In vivoおよびIn vitroにおける分泌型ephrin-A1の機能を明らかにし、マウスモデルを用いた実験系では肺転移を顕著に抑制した。将来的に抗がん剤の標的候補分子となることが期待される。
肺転移における分子標的薬の開発を目指すにあたり、肺転移におけるADAM12-ephrin-A1の詳細な調節機構の解析によりADAM12-ephrin-A1の上流の関連分子を同定し、分子標的治療薬の候補分子を複数同定する。
年度末に研究消耗機器の購入予定していたが納品が遅れ年度内の研究費の施行ができなかったため購入予定の研究消耗機器は4月初旬に納品されたため他の予算で支払いを行ったので、本研究に使用する他の研究試薬に充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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