代表者は近年、RNA監査機構であるナンセンス変異依存RNA分解(NMD)が小胞体におけるタンパク質品質管理(小胞体品質管理)において重要な役割を担うことを見出した。本研究課題では、このNMD-小胞体品質管理クロストークの分子機構の解明を目標に研究を展開している。これまでの研究から、NMD制御遺伝子の1つであるSMG6が、クロストーク制御において特に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきていた。 これまでに線虫C.elegansにおけるsmg-6遺伝子欠損変異が小胞体ストレスを発生させることが示されていた。本年度においては、様々なsmg-6遺伝子変異アリルについて、そのNMDと小胞体の恒常性維持への影響について解析し、比較・検討を行った。その結果、SMG-6タンパク質の特にC末端領域が重要な役割を担うことを明らかとなった。この領域はNMDにおけるRNA切断に重要なRNaseH活性を持つPIN domainが存在しており、これがNMDと小胞体の恒常性維持の双方に必須であると考えられる。またSMG-6タンパク質に関して蛍光タンパク質との融合遺伝子を発現するレポーター株を作出し解析を行った。その結果、SMG-6タンパク質の細胞内局在の制御に関わる領域の存在が示された。今後、smg-6遺伝子のNMDや小胞体品質管理に関わる機能と細胞内局在との関連性についてさらなる解析を進め、その分子機構を明らかにしていく。
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