本研究では、成長する生体組織への構造物固定方法の基礎的研究として、吸着面に垂直・平行それぞれの方向に対するマイクロ吸盤アレイの吸着力制御を目的として研究を行った。胎児期疾患である脊髄髄膜瘤の治療法として、パッチで患部を保護する方法が試みられており、この治療法において、胎児の脆い皮膚に侵襲を与えず取りつけが可能で、治療から出生までの間の成長によるサイズ変化に対応可能なパッチの固定方法が求められる。 本年度は、マイクロ吸盤アレイに対して、吸着面と平行な方向に力を加えた際の様子を観察・評価した。まず、平成25年度に試作した吸着力評価装置のフォースゲージを6軸力計に置き換え、マイクロ吸盤アレイを吸着面に平行な方向に動かすために必要な力を計測可能な装置へと改良した。このとき、マイクロ吸盤アレイを固定対象に吸着する際の条件を統一するため、マイクロ吸盤アレイを対象に押し付ける際の押しつけ力を計測可能な構成とした。次に、固定対象との接触面積を調整可能な、接触面積調整用の構造を持つマイクロ吸盤アレイの試作・評価を行った。接触面積調整用の構造は、ポジレジストで形成した吸盤のくぼみを形成するための構造上に、ネガレジストにより、吸盤のくぼみより小さいサイズで、吸盤のくぼみを形成するための構造と同様の構造を形成した型により型取りすることで実現した。接触面積調整用構造の大きさの異なるマイクロ吸盤アレイを試作し、接触面積調整用構造を持たないマイクロ吸盤アレイと吸着力を比較した。
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