研究実績の概要 |
水溶性タンパク質の場合と同様に、膜タンパク質同士の相互作用には特異性があり、相互作用相手に応じ、単量体の場合とは異なる機能が発現する。疾患との関連が示唆される複合体の報告例もあり、膜タンパク質間相互作用ペアの情報の有用性が高まっている。しかし、膜タンパク質間相互作用ペアの網羅的同定は未だに困難な課題であり、その予測手法も報告されていない。 今年度は、昨年度までに開発済みの創薬標的として注目度の高いタンパク質に特化した予測法のうち、特にGPCRsについて執筆した論文の投稿と、その修正、そして再投稿を行った結果、PROTEINS: Structure, Function, and Bioinformatics誌に受理された。 昨年度行った解析から、膜タンパク質間相互作用ネットワークでは、水溶性タンパク質間相互作用ネットワークよりもクラスタ係数が大きい傾向が示唆されていた。この生物学的な意義は明らかにできなかった。しかし、二つのネットワークを統合したネットワークを解析した結果、膜タンパク質間相互作用ネットワーク上では遠く隔たった二つの膜タンパク質を時空間的に近接させる、膜タンパク質間相互作用ネットワークをバイパスさせる水溶性タンパク質の存在が明らかとなった。このバイパスタンパク質に特有の機能、逆に、バイパスされる側の膜タンパク質とそれらが関与するシグナル伝達経路の特徴についても解析を続けている。
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