研究課題/領域番号 |
25870768
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
関 洋一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (30634472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 色覚 / ショウジョウバエ / 神経行動学 / 感覚生理学 / 光受容体 / 色 / 電気生理 / 脳 |
研究概要 |
動物は外界の光環境から、少数の異なる分光感度(波長特異性)を持つ光受容体を使って、色世界を見ることができる。色の見え方の違いは、異なる分光感度を持つ光受容細胞の活動の組み合わせにより決定される。色覚生成のためには、脳内において、これら異なる光受容細胞からの情報を統合する機構があると考えられる。しかし、中枢神経系における色覚生成の神経情報処理機構はよくわかっていない。本研究では、視覚情報処理経路において、ヒトとも多くの機能構造的共通性を持つショウジョウバエを用い、色覚情報処理中枢の神経群を対象に電気生理学的手法を適用する。そして、中枢神経系における色覚生成機構を明らかにすることを目的とする。 中枢神経系における色覚生成機構を解明するためには、中枢神経系の色覚情報処理経路の神経群から分光感度を測定し、それを光受容細胞の分光感度と比較するのが、有効な最初のステップである。そのために、ショウジョウバエ中枢神経系における色覚情報経路の神経群を対象に、電気生理学的手法であるホールセルパッチクランプ法を適用する。また、電気生理学的に得られた中枢神経群の光応答特性と実際のショウジョウバエの色識別能について対応関係を調べるため、色識別の行動実験を行う。 平成25年度は、電気生理学的手法適用のための第一歩として、ショウジョウバエの可視範囲において、光の波長および強度を短波長から長波長までコントロールできる光刺激装置を構築した。そして、実際にショウジョウバエから網膜電図を計測し、光刺激条件について検討した。また、報酬学習を利用した色識別の簡易的な行動実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、キセノン光源、モノクロメーター、シャッターコントロール装置、光ファイバーなどから構成される光刺激装置の選定および購入を行った。その光刺激装置を実験セットアップに組み込み、300-700nmの範囲で光子数を合わせた単波長刺激を行えるようになった。そして、光刺激装置の評価として、網膜電図(ERG)を用い、実際にハエの目に光が適正に照射されていること、適正な光の強度範囲、順応の起こらない刺激間隔の選定を行った。平成26年度は確立した光刺激法を用い、視覚中枢の2次、3次神経細胞からホールセルパッチクランプ法による分光感度の測定を行う。 また、ショウジョウバエの色識別能を評価するための行動実験として、先行研究を参考にタブレットPCからの光を条件刺激、スクロースを無条件刺激として用いた報酬学習実験系を確立した。野生型と光受容体変異体の色識別能の違いを評価した。
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今後の研究の推進方策 |
電気生理実験セットアップのCCDカメラの解像度に問題があり、標的とする視覚中枢の2次、3次神経細胞の細胞体の視認が十分にできなかったことが、ホールセルパッチクランプ法の確立の障壁となっていた。カメラを交換したことにより視認性が改善されたため、今後はより安定的な計測法の確立が期待できる。また、色識別能を評価する行動実験に関しては、より細かい波長弁別能を評価できる実験系を新たに構築する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね計画通りに物品購入などを行ったが、少額の余りが生じたので、次年度の消耗品用に繰り越した。 実験に必要な消耗品および学会旅費に使用する予定である。
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