NP困難な組合せ最適化問題の準最適解を求める発見的解法として,カオスサーチ法が提案されている.本研究の目的は,カオスサーチ法のパラメータ値を決定する手法を開発することである.カオスサーチ法は,カオスニューロンモデルを用いてニューラルネットワークを構築し,局所探索法の実行をニューロンの内部状態により制御する手法である.優れた発見的解法の開発には解の集中化と多様化が重要であり,カオスサーチ法は,カオスニューロンのゲイン効果が解の集中化を担い,不応性効果が多様化を実現している.カオスサーチ法が優れた性能を示す理由として,この不応性効果が効果的な探索を実現しているためと考えられている. 本研究では,最適なパラメーターを決定するために,効果的な探索ができるパラメータ値とニューロンの振る舞いの関係性について調査を行った.数値実験により,良好なパラメーター値と個々のニューロンの振る舞いを比較した結果,モチーフ抽出問題の場合においては,単一なカオスニューロンがカオス的な振る舞いとなるパラメータ値付近において,高い確率でモチーフ抽出可能なことが確認できた.しかし,巡回セールスマンの場合はそのようは傾向は見られなかった.この結果は,カオス的な振る舞いをするパラメータ値と性能,関係性がないことを示している. また,相互結合型カオスニューラルネットワークを用いた手法において,パラメータ値を決定法の考案も行った,問題サイズは異なるが,入力データの性質が似通った2次割当問題のベンチマーク問題に対して,パラメータ値を細かく変えて性能調査を行った.その結果,問題サイズによらず,良好な解が得られるパラメータ値は共通であった.計算時間の短い小規模問題に対して良好なパラメータ値を決定し,その値を大規模問題にも用いることで,良好な解が得られることはこの研究で得られた知見である.
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