本研究は、建築分野でのLCA実施において、バックグラウンドデータ(原単位)の連鎖のありかたについて検討を行ったものである。具体的には、不適合なバックグラウンドデータの利用が評価結果に及ぼす影響を評価する手法を構築するとともに、建築・住宅の評価における不適合データの影響を定量的に明らかにすることを目的とした。その結果を踏まえ、評価目的に応じたLCA実施の留意点・原単位活用方法を提案することを目的とした。
(a) 実態調査に基づく建築におけるLCAプロセスの整理: 建築分野でのLCA実務者(約10名)に対して、調査を実施し、LCA実施における課題やデータのニーズについて、明らかにすることができた。 (b) バックグラウンドデータの適合性評価手法の構築: バックグラウンドデータの連鎖の妥当性を判断する「適合性」の評価手法を構築した。 (c) 建築学会の原単位における適合・不適合の評価: 事例住宅8件と、統計資料をもとにした平均的な住宅のデータについて適合性を評価した。その結果、住宅の評価においては適合率が低いことを明らかにした。具体的に、材料別・部位別の視点で、不適合となるデータを明らかにすることができた。 (d) 評価における不確実性の算出: 不適合なデータを用いることによって生じる誤差について、誤差データベースを構築し、(c)の対象事例について誤差評価を行って、不適合なバックグラウンドデータを連鎖することによって生じる誤差を明らかにした。 (e) 設計プロセス・評価者の評価目的に応じた実施方法の提案: 以上の検討結果をもとに、評価における留意点を示すことができた。誤差が大きく、また、ニーズの高いバックグラウンドデータを作成した。更に、その精度改善効果を明らかにした。
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