研究課題/領域番号 |
25870772
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
春本 高志 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (80632611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素 / パラジウム / 窒化アルミニウム / エピタキシャル成長 / 極薄膜 / 界面物性 / ひずみ / 菱面体 |
研究実績の概要 |
Pdは、水素吸蔵に伴い、体積や電気伝導率が変化する。この現象を利用したPd薄膜型水素センサは、非常に単純な構造であるので、これまで多くの研究がなされてきた。しかし、水素化・脱水素化の繰り返しによりPdの結晶性が低下し、その結果、センサ特性が徐々に低下するという問題が知られており、未だ実用化には至っていない。 そこで、本研究では、Pdの結晶性低下問題を、ローカルエピタキシーにより解決することに取り組んでいる。具体的には、6回対称性を有するAlNのC面上に、(111)Pdをローカルエピタキシャル成長されることにより、水素化・脱水素化によるPdの結晶性低下を抑制する、及び、低下してしまった結晶性を回復(結晶学的自己組織化)させることを試みている。 本年度は、昨年度に組み上げた成膜装置を用いて様々な層構造・膜厚のPd/AlN多層薄膜を作製し、水素に対するセンサ特性について系統的に調査した。その結果、Pd薄膜が(111)に強く配向している時に良好なセンサ特性を示すと判明した。また、水素を導入しながらin-situ XRD測定を行うため治具を製作し、水素化に伴う格子の伸縮や結晶性の変化を調査したところ、基板面垂直方向に優先的に格子伸縮すると判明した。よって、ローカルエピタキシャル関係により面内方向への膨張が制限され、そのことにより、結晶性の低下が抑制されているものと予想される。また、このような薄膜における格子伸縮・ひずみを解析するための手法「菱面体ひずみ解析法」を考案した。今後は、電気伝導率などの物性とひずみの関係を、考案した解析法を用いて系統的に調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、Pd/AlN多層薄膜を水素センサとして評価するための専用測定システムを構築し、それを用いて研究を進めている。また、結晶学的自己組織化に関する調査も、断面TEM観察やin-situ XRD測定により継続して取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの電気的な観点に加え、機械的・光学的な観点からもセンサ特性評価を行う。また、本研究の特徴である結晶学的自己組織化をセンサ「素子」のレベルで実現するべく、組込ICとの一体化についても検討する。
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