古代のガラスやセラミックといった人工遺物の化学組成は,使用された原料の種類や採取地を強く反映するため,製法や製造地の考察に際して有効な指標となる。本研究では,可搬型の高性能蛍光X線分析装置を考古遺跡や博物館に持ち込んでのオンサイト分析調査,および高エネルギー放射光蛍光X線分析による微量重元素分析という2種類の分析手法を非破壊で駆使し,古代エジプトのガラス・ファイアンス・合成顔料・金属製品を中心とした遺物の非破壊の化学的特性化を進めた。着色剤としてCuを用いた古代エジプトのガラス・ファイアンス・顔料において,原料の時代変遷が見られたほか,金属精錬との関連性が示された。
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