研究実績の概要 |
我々は、低負荷でゆっくりとおこなわれることから高齢者にも親しまれる健康法である「太極拳」に注目し、研究を進めている。通常、こうした健康法は身体的な側面での効果を期待されるが、動作に意識を集中する運動過程が大脳皮質およびその関連部位の活性化を引き起こし、その結果として気分や幸福感を改善するのではないかと考えている。 公益社団法人 日本武術太極拳連盟の協力のもと、同法人の指導員講習会の各講習会場において回答協力の得られた2,491件のプロフィール調査(内閣府の幸福度調査【国民選好度調査】に準拠)のデータを解析した。その結果、太極拳実践群では、対照群(内閣府取得データ:一般)と比較して、解析した全ての年代(30代~80代)において主観的幸福感が高い値を示した。また、太極拳実践者の主観的幸福感を実施頻度別に比較すると週に1日しか実践しない人に比べ、週に複数日(2日、4日、5日、6日)実践している人で高い値を示すことが確認された。これらのデータは統計的に意味のある違いであり、中高年層の太極拳実践者は一般の人よりも主観的幸福感が高く、それには週2回以上の実践が貢献している可能性を示した初めてのデータとなるため、日本体育学会第66回大会にて発表した。一方、太極拳実践者の主観的幸福感を技術レベル別(1級、初段、二段、三段、四段)に比較したところ、全てのレベルで一般より高い値を示したものの、技術レベルでの違いは認められなかった。 また、測定実験においては、これまで若年者において確認されていた太極拳の実施に伴う大脳皮質(前頭前野)の血流上昇が高齢者においても確認された。 本研究は太極拳の実践が高齢者の大脳皮質の活性化を引き起こすこと、継続的な実践は実践者の主観的幸福感を高めることを示した。従って、健康に長生きすることを願う高齢者にとって、太極拳は非常に有効な運動課題となる可能性を示唆した。
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