研究課題
若手研究(B)
これまでの研究で初期生育速度を増加させる QTL (qEGR1) を特定した。qEGR1は、これまでの研究背景からカサラス型OsSPS1遺伝子発現量の増加による初期生育の向上であることが強く示唆された。しかしながら、ショ糖リン酸合成酵素 (SPS) 遺伝子発現量の増加がどのように生育速度の増加をもたらすのか、その要因は不明である。本年度は、コシヒカリを遺伝的背景とし、qEGR1近傍がKasalath型に置換された染色体断片置換系統SL203を用いて、OsSPS1およびその他のSPS遺伝子群やSPP遺伝子群の遺伝子発現を調べ、OsSPS1発現量の増加がイネの乾物生産に与える影響を調査した。SL203のOsSPS1遺伝子発現量は、コシヒカリよりも有意に増加していた。一方で、その他のSPS遺伝子群の発現は検出されなかった。このときSPP遺伝子群の発現を調べたところ、OsSPP1のみ発現が確認されたもののOsSPP2およびOsSPP5の発現はほとんど確認できなかった。また、系統間でSPP遺伝子の発現量に有意な差は見られなかった。また成長解析の結果、SL203の相対成長速度(RGR)はコシヒカリに比べて有意に大きいことが確認された。このRGRの増加は、要面積比(LAR)の増加によるものではなく、純同化率(NAR)が増加することによることが明らかとなった。しかしながら、個葉のガス交換速度を解析したところ、SL203とコシヒカリで優位な差はみられなかった。qEGR1の生理機能解析と平行して、qEGR1の原因遺伝子候補領域を絞り込むために、SL203にコシヒカリをバッククロスしてBC1F1種子を25粒得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の実施計画通りに、成長解析によるQTLの機能解析、および候補領域特定のためのバッククロスの両項目について実施し、結果を得ることに成功した。
QTLの候補領域絞り込みのためのバッククロス解析は引き続き行う。また、乾物生産に関わる他のQTLについての機能解析や、生育初期および生育中期などの生育時期によるQTLの変化についても実施する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Nature Genetics
巻: 45 ページ: 707-711
10.1038/ng.2612