研究課題/領域番号 |
25870781
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
川村 仁子 東洋大学, 法学部, 助教 (40632716)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グローバル・ガバナンス / 非国家主体 / 自主規制 / グローバル法 / 先端科学・技術 / トランスナショナル・ガバナンス / 規範 / ヨーロッパ |
研究概要 |
今年度は、海外での調査・資料収集により、先端科学・技術分野の非国家主体による自主規制の分類と、それらの課題解明および理論的側面からの研究を行った。 まず前半期では、非国家主体によるグローバルな自主規制について、理論的側面からの分析を行った。特に、非国家主体が形成するグローバルな規範の「正統性」についての理論分析を行い、その成果を論文「グローバル市民社会における民間による自主規制の『正統性』―システム分析からの検討―」(『立命館国際研究』第26巻3号、2013年、pp.1-18)として発表した。 次に、本研究に関わる資料はインターネットを含め日本国内では入手できないものが多くあり、また、研究のためのネットワーク構築の必要があったため、後半期の平成26年年2月19日から一週間、フランス・パリおよびストラスブールにおいて、海外研究を行った。パリのLa Documentation Francaiseおよびパリ第1大学を訪れ、当該研究に関する資料、特に、国際関係とグローバル・ガバナンス、生命倫理に関する資料およびフランス国務院の判例の検索・収集を行った。また、European Space Agency(ESA)を訪問し、事務次長のDr. Rene Oosterlinckおよび国際関係局長のDr.Frederic Nordlundへのインタビューを実施するとともに、ESAと非国家主体の協力によるプロジェクトに関する資料を入手した(個人名の明記について先方の許可を得ている)。加えて、ワークショップを開催できる可能性について議論した。 これらの成果は、関連研究会、著書(共著)、論文(『東洋法学』、『立命館国際研究』)を通して公表した。現在は収集した資料をもとに先端科学・技術に関する非国家主体の自主規制の分類を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の6月に予定していたInternational Convention Asian Scholarsでの報告は、残念ながら校務のため実現できなかったが、その他の研究計画は順調に進展している。 平成26年2月には、事前に予定していたフランス・パリのLa Documentation Francaiseおよびパリ第1大学を訪れ、資料の検索・収集を行うことができ、また、パリのEuropean Space Agency、ストラスブールのHopital civil de Strasbourgを訪問し、担当者へのインタビューを実施するとともに、公的機関と非国家主体との協力によるプロジェクトに関する資料を入手することができた。何よりも、問題関心を共有する研究者との国際的ネットワークを形成することができたことが、大きな収穫であった。 また、平成25年度中に、非国家主体によるグローバルな自主規制の規範としての「正統性」について、理論的側面からの分析も行うことができた。 今後は、国内のナノテクノロジー・プラットフォームに参加する主要研究機関、国際商業会議所(フランス)、ヨーロッパの先端科学・技術系学会、関連企業、担当省庁を訪問し、先端科学・技術分野の自主規制に関する資料や、これまで非国家主体がEUや国連、WTOなどの公的国際機関、およびサミット等国際会議の参加首脳に対して行なってきた意見具申・政策提言の一次資料などを入手し、それらの分類を引き続き行う。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を展開すべく、公的規範や非国家主体による自主規制といった重層的な規範に基づくガバナンスを試みているEUの先端科学・技術分野の管理を事例に、非国家主体による自主規制の「国際法規範性」を国際制度的側面から検討する。特に、平成25年度の海外研究において築き上げた、European Space Agency事務次長のDr. Rene Oosterlinckおよび国際関係局長のDr.Frederic Nordlund(個人名の明記について先方の許可を得ている)とのネットワークを生かし、科学技術政策・管理についての国際機関と加盟国、国際機関と他の国際機関、国際機関と民間の連携(官民混合パートナーシップ Public Private Partnership)に注目しながら、既存の国際規範およびガバナンスとの関係を明らかにする。 夏にヨーロッパの関連機関(欧州委員会、欧州保険局、欧州議会科学・技術オプションアセスメント委員会)を訪問する予定である。バイオテク・ナノテク戦略を中心とした先端・科学技術の管理に関する文献・資料を収集し、制度的側面から非国家主体による自主規制の「国際法規範性」ついて検証する。また、Dr.OosterlinckとDr.Nordlundを日本に招いてのワークショップを企画している。 前年同様、成果はシンポジウム、国内外での学会報告ならびに、雑誌投稿を通して公表する。
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