研究課題/領域番号 |
25870786
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 真規 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (30434096)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
新規プロバイオティクス細菌であるLactobacillus crispatus KT-11株生菌の歯周病原細菌に対する抗菌効果について,前年度までにKT-11株が産生する乳酸による培地中の水素イオン濃度(pH)の変化がPorphyromonas gingivalis(P. g菌)およびPrevotella intermedia両菌に対して強い殺菌効果を示すことを報告した。本年度はさらに侵襲性歯周炎の原因細菌である高白血球毒素産生Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A. a菌)および歯周炎の悪化に関与すると考えられるCandida albicans(C. a菌)を使用して同様の実験を行った。A. a菌ではKT-11株との混合培養することで9時間後(pH 5.0付近)には完全に死滅したが,真菌であるC. a菌はKT-11株との混合培養後48時間(pH 4.2)でも菌数の変化が認められなかった。また,C. a菌は環境条件によって酵母型あるいは菌糸型をとる二形性真菌として知られており,菌糸型になることで細胞に侵入することが知られている。そこでC. aとKT-11株を混合させ,C. a菌を菌糸型発育に誘導する培養条件で培養したところKT-11株非混合の系と比較してKT-11株混合培養の系ではC. a菌の菌糸型発育が抑制されていた。 P. g菌を2週間毎日経口摂取させた歯周病モデルマウスにおけるKT-11株の歯周病予防効果の検討したところKT-11摂取群では血漿中全IgGと唾液中全分泌型IgA抗体の誘導が示され,P. g菌特異抗体価も上昇していた。 以上の結果から,KT-11株は歯周病原細菌を死滅させることや口腔カンジダ症の原因微生物であり,歯周病を悪化させる可能性のあるC. a菌の菌糸型誘導阻害を行うことにより,歯周炎を予防できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度も同様に平成25年度に行うはずであったマイクロアレイについては,マウス歯肉上皮のRNAを抽出しているので準備は整っているものの,実験手技およびデータ解析に対してアドバイスをしてくれる必要不可欠な協力者が所属研究機関における研究の遅延により,本研究への協力が遅れている。業者への委託も考慮したが,解析まではできないとの返事であったため保留している。 また,人に対するKT-11株の歯周病予防効果あるいは改善効果の検討については,平成26年度の倫理基準の変更などに伴って,本学倫理委員会が停止している。平成27年度から本学倫理委員会が再開するのを待ち,審査を受ける予定である。 一方,KT-11株含有錠菓およびプラセボ錠菓に関してはすでに製造されており,倫理委員会で承認されればいつでも実験できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度同様に早期にマイクロアレイを行えるよう協力者に求めていく。また,マイクロアレイ後速やかに,歯周病予防に関連する可能性の高いバイオマーカーを検索し,リアルタイムPCRで定量する。KT-11株を使用した歯周疾患改善効果の臨床試験を行うために本学倫理委員会に申請書を提出し承認をもらう。錠菓はすでに作成済みであるため,承認後いつでも開始することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度同様マイクロアレイを行うことができなかったことから予算に計上した額とほぼ同等の金額が残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後,マイクロアレイに関する協力者とも密に連絡を取り合い,次年度使用額を再度マイクロアレイに使用していく。
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