研究課題/領域番号 |
25870788
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
成澤 直規 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (90632034)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 魚醤 / 発酵食品 |
研究概要 |
魚醤とは魚介類を原料として高塩分条件下で発酵させて作られる液体調味料である。発酵は主に原料由来のプロテアーゼにより進行するものと考えられているが、微生物の関与も近年指摘されている。他方、バイオフィルムとは界面に形成される微生物によるフィルム状構造体であり、発酵食品製造でも経験的に応用されている。本研究の目的は魚醤発酵中におけるバイオフィルム形成菌の存在を明らかにすることである。また、複数種のバイオフィルム形成菌をスターターとして用い、魚醤の速醸化、魚臭の低減など製造レベルでの課題解決へ向けた応用を目的とする。 ニジマスを原料とした魚醤を対象として、バイオフィルム形成能に優れた細菌の分離・同定を行った。分離には組成が異なる6種類の培地を使用した。分離培養後の各細胞について、マイクロタイタープレート法によるバイオフィルム形成能の評価を行った。原料魚の内臓、および魚醤発酵後2週間目のもろみから、バイオフィルム形成能が高い細菌種を複数種得ることができた。これら細菌種の一部は、16S rRNA遺伝子解析の結果から、Staplylococcus属細菌に高い相同性を有することが明らかとなった。Staplylococcus属細菌は魚醤中に存在することがこれまでに多数報告されているが、バイオフィルム形成能に関する検討はなされていない。また、分離株の中には魚醤エキスを加えることでバイオフィルム形成量を増加させるものも存在した。現在、本菌の同定と魚醤エキス中に含まれるバイオフィルム形成促進物質の探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の申請おいて、カタクチイワシを原料とした魚醤を対象として解析を行う予定であったが、安定的に原料を確保することが困難であった。よって年間を通じて入手可能であった養殖魚であるニジマスを対象として解析を行うこととした。本申請内容に一部含まれる魚醤の成分の経時変化等についても解析を行っており、順調に進展している。また先に示したように、バイオフィルム形成細菌の分離・同定も完了している。よって、H25年度に計画している申請内容については、概ね順調に消化しているものと判断される。また、H26年度の実施内容の一部について、H25年度においてすでに実施している。
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今後の研究の推進方策 |
分離株の同定、並びに共培養条件下でのバイオフィルム形成能を評価し、複合系バイオフィルムを構築する。また複合系バイオフィルムを魚醤発酵のスターターとして用いた場合の発酵速度、成分変化などの解析を行う。これらは当初の申請書に示した通りである。また、H25年度の解析結果から、魚醤の何らかの成分がバイオフィルム形成を促進することが明らかになった。これは複合バイオフィルムの応用化にとって極めて重要であると考えられることから、促進物質の特定も行う。これら研究結果について日本食品科学工学会第61回大会にて発表予定である。
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