本研究においては、ヒトの抑制機能と脳活動ならびに筋活動との関係について検討と行った。前年度までは、抑制機能に関連した脳活動様式について随伴陰性変動(CNV)と事象関連脱同期/同期(ERD/ERS)を求め、大脳皮質の活動性と反応抑制の成否との関連について検討した。そして、反応抑制失敗時は成功時よりも反応準備期に前頭前野におけるERDが亢進していること、さらに反応抑制成功時よりも失敗時のほうが有意に後期CNVの振幅が高かったことを明らかにした。 そして、本年度は筋活動と反応準備期の脳活動の関連性について検討した。本実験においては反応用ボタンを用いているが、反応抑制に成功した際に、筋活動がみられない反応抑制とわずかに筋活動が出現するもののボタン反応に至らず反応抑制が(見た目上)成功する場合がある。筋活動がある場合の反応抑制と筋活動がみられない反応抑制時の脳活動を比較検討したところ、筋活動がみられない場合のほうが反応準備期の前期CNVの振幅が高かった。つまり、反応準備初期段階における前頭前野における高い活動が反応抑制処理を亢進させることを示唆している。前年度の研究結果との比較から、CNVの前期成分と後期成分の発生機序は異なっており、反応時の実行処理と抑制処理への関与の方略が異なることが示唆された。本研究結果により、より高い時間分解能で反応抑制における反応準備期の脳活動様式について明らかになった。
|