研究課題/領域番号 |
25870793
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小林 克也 法政大学, 経済学部, 教授 (50350210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 選挙 / 間接民主制 / 関連研究の改訂 |
研究実績の概要 |
本課題研究では、代表民主制下における市民の投票への参加と棄権の行動について、市民の小さな結託が及ぼす影響を理論的に明らかにすることを目的としている。私たちは選挙の際、従来のモデルが想定するような決定権を握る確率を考えながら投票をしない。むしろ、市民同士の横のつながりが投票行動に影響を与えている。そこで本課題研究では、このような横のつながりを市民同士の小さな政治的結託と考え、市民を連続で扱い、(1)市民が戦略的投票をする場合と誠実な投票の場合で参加と棄権の行動がどう変わるのか、(2)市民の参加・棄権の行動が候補者決定過程にどのように影響するのかの2点を明らかにする。 2014年度は、選挙が重層的に実施された場合に得られる結果が単層の選挙に比べてどう変わるかという関連の共同研究を論文として完成させた。2014年12月に共同研究者と相談の上、この分野の専門誌としては評価の高いSocial Choice and Welfareに投稿した。残念ながら年度末にrejectの通知を受け取った。改善点を記したreferee reportがつけられたので、現在はそのreportに基づいて修正中である。また、本課題研究の着想の元になっている米国のような2大政党がどのように形成されるのかを、結託した市民の移動によって説明する共同研究はEconomics of Governanceから改訂要求が来ていたが、改訂版を送った。これについて年度末にrefereeから再度の改訂を求められ、現在、その指示に基づいて共同研究者と改訂中である。課題研究本体については分析の計算を進めたが、計画していた要素を組み込むとモデルが複雑になりすぎ結果を得ることが困難であることが分かってきた。現在、方向性を再検討中である。期間内の達成が困難であるため、補助事業期間延長を申請し、3月20日付でこれが認められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本課題研究の着想の元となった土台となる共同研究については、再度の修正要求なので専門誌への掲載に近いところまで来ていると思われる。しかし、もう一つの関連する共同研究は14年度末に専門誌にrejectされたため、referee reportを参照しながらどのように修正するかを共同研究者と検討中である。加えて、課題研究本体については、計画にある要素を組み込んだモデルが複雑すぎて結果を得ることが困難なことが明らかになってきたため、分析の方向性を修正する必要がある。これらから課題研究の基礎部分についてはある程度進展したと言えるが、課題本体部分についてはモデルに組む要素を減らした上で、分析し直す必要がある状態である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題研究の土台となる共同研究は修正を進めて15年度内に専門誌に掲載決定を得られるものと確信している。他方、関連の共同研究は修正を施した上で、15年度前半に別の専門誌に投稿し直し、年度内に掲載決定を得られるように努める。課題研究本体部分については、投票者の参加・棄権行動を組み込んだモデルの分析が複雑化したため、少しモデルを組み替えて分析し直す。具体的には、投票に行く誘因の低い投票者の棄権行動ではなく、代わりに特定の党に属さない浮動票(swing voter)として行動する市民をモデルに組み込む。その上で、当初の研究計画に近い形で、党の候補者決定過程に浮動票がどのように影響するのかについてのモデル分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は、課題研究に関連する2つの共同研究については専門誌に投稿して改訂していくという計画は予定通りの進展であった。しかし、1つはrejectされてしまった。この影響を受けたことと、課題研究のモデルの複雑さにより分析の進展が遅れたため、当初予定していた研究報告が実行できなかった。このため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は着実に分析を進め、研究会等で研究結果の報告をできる状態にし、そのための旅費、校閲の費用として、年度後半には着実に執行する予定である。
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備考 |
(1)は関連する共同研究、(2)は本課題研究の元になっている共同研究。
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