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2013 年度 実施状況報告書

薬物間相互作用によるイオン液体型分子複合体の物理化学的特性および皮膚透過性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 25870795
研究種目

若手研究(B)

研究機関星薬科大学

研究代表者

古石 誉之  星薬科大学, 薬学部, 助教 (90385980)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードイオン液体 / 経皮吸収 / 分子複合体 / 溶解度
研究概要

新規イオン液体型分子複合体の作製を,非ステロイド性消炎鎮痛剤と局所麻酔薬との組み合わせでスクリーニングを行ったところ,フルルビプロフェンとリドカインとの組み合わせにおいて,室温で液体状態を保つことができる化合物を得ることができた.この液体状態の組み合わせについて,熱分析(DSC)を用いて測定したところ,単味由来の吸熱ピークは消失し,-12℃付近にガラス転移点が確認できた.また,FTIRを用いて測定したところ,フルルビプロフェンのカルボキシル基に由来するピークがシフトする様子が観察された.
次に溶解度を求めた結果,薬物単味に対してフルルビプロフェンが約260倍,リドカインが約5.4倍上昇した.さらに,溶解度相図を作製したところ,フルルビプロフェンとリドカインはHiguchiらの分類によるAL型の相図を示し,水中では1:1の複合体形成をしていると考えられた.
さらに,ヘアレスマウス皮膚透過性について検討を行った.透過性試験はFranz型拡散セルを使用し,それぞれの薬物濃度を1%とした2%ヒプロメロースゲル製剤を用いた.その結果,フルルビプロフェン単味のFluxが8.0 μg/cm2/hであったのに対し,フルルビプロフェン/リドカイン複合体からのフルルビプロフェンのFluxは30.1 μg/cm2/hと約2.5倍増大した.一方,リドカインのFluxは18.4 μg/cm2/hと単味と比較して約1/2となった.これより,フルルビプロフェンの皮膚透過性はリドカインを併用することにより向上することが分かった.
以上の結果より,フルルビプロフェンおよびリドカインが新規イオン液体型複合体を形成し,難溶性薬物であるフルルビプロフェンの溶解性が向上し,皮膚透過性も単味よりも上昇することから,薬物同士の分子間相互作用によるイオン液体化の有用性を示すことができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は非ステロイド性消炎鎮痛剤と局所麻酔薬の組み合わせで新規イオン液体型分子複合体の作製を試み,その物性値の把握および経皮吸収性の確認を行うことを目的としていた.その結果,フルルビプロフェン-リドカインの複合体を見出し,それらの相互作用メカニズムや物性値を明らかにできたこと,また,薬物単味よりも皮膚透過性が向上していることを確認できたために,当初の目的はおおよそ達成できたものと考えられる.
具体的な物性評価としてDSC測定によるガラス転移点の算出,FTIRを用いた分子間相互作用部位に特定,溶解度測定および溶解度相図による溶液中での相互作用の確認について検討を行うことができた.
また,製剤化を鑑み,2%ヒプロメロースを基剤としたゲル製剤を作製したところ,フルルビプロフェンの皮膚透過性は,イオン液体としたときのほうが単味より向上したことから,当初の目的である医薬品同士の組み合わせによるイオン液体化による物性の改善,それに伴う皮膚透過性の向上についての結果を得ることが出来たことから,おおむね順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

新規イオン液体型複合体であるフルルビプロフェン-リドカインについてはいくつかの物性を明らかにしたものの,まだ検討する項目があるため,それらの項目を早急に検討を行う.具体的には,FAB-MSによる複合体の化学量論比の決定,水/オクタノール分配係数,NMR測定による溶液中での相互作用の確認などが挙げられる.また,室温でこの複合体は予試験の段階ではある程度安定であることが確認できているが,加速試験を実施し,詳細な安定瀬性試験についても検討を行う.皮膚透過性試験では,イオン液体にした複合体の製剤開発を進め,より実際に使用できる剤形の開発を行う予定である.特に貼付剤にした例はないために,製剤設計に着手する予定である.
一方,他の化合物に関しては,循環器系薬物でACE阻害剤とβ遮断薬との組み合わせで,室温状態で液体化する組み合わせを見出している.これらについても,早急に物性値および皮膚透過性についても検討を行う予定である.
さらには,すでに報告しているインドメタシン/リドカインについても,オルガノゲルを用いた製剤設計も着手している.
このように,当初の鎮痛剤-局所鎮痛剤だけでなく,他の領域における薬物間相互作用についても検討を広げていき,イオン液体の分子間相互作用のメカニズム,また,実際の臨床現場で応用できる製剤化についての可能性を追求していく予定である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Quetiapine free base complexed with cyclodextrins to improve solubility for parenteral use2013

    • 著者名/発表者名
      Noriko Ogawa, Mayumi Kaga, Tomohiro Endo, Hiromasa Nagase, Takayuki Furuishi, Hiromitsu Yamamoto, Yoshiaki Kawashima, Haruhisa Ueda
    • 雑誌名

      Chemcal & Pharmaceutical Bulletin

      巻: 61 ページ: 809~815

    • DOI

      10.1248/cpb.c13-00157

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Blood-brain barrier transport of an essential amino acid after cerebral ischemia reperfusion injury2013

    • 著者名/発表者名
      Toyufumi Suzuki, Yumiko Miyazaki, Aya Ohmuro, Masaki Watanabe, Takayuki Furuishi, Toshiro Fukami, Kazuo Tomono
    • 雑誌名

      Acta neurochirurgica. Supplement

      巻: 118 ページ: 297-302

    • DOI

      10.1007/978-3-7091-1434-6_58

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of terpenes on the skin permeation of lomerizinedihydrochloride2013

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Furuishi, Yukiko Kato, Toshiro Fukami, Toyofumi Suzuki, Tomohiro Endo, Hiromasa Nagase, Haruhisa Ueda, Kazuo Tomono
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences

      巻: 16 ページ: 551-563

    • 査読あり
  • [学会発表] β-シクロデキストリン誘導体によるクロザピンの可溶化

    • 著者名/発表者名
      古石誉之 ,関野晃平,長瀬弘昌, 遠藤朋宏,上田晴久
    • 学会等名
      日本薬剤学会第28年会
    • 発表場所
      愛知県産業労働センター ウインクあいち
  • [学会発表] Physicochemical properties of sertraline base-β-cyclodextrin complex in aqueous solution and solid state

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Furuishi, Noriko Ogawa, Takuro Hashimoto, Tomohiro Endo, Hiromasa Nagase, HIromitsu Yamamoto, Yoshiaki Kawashima, Haruhisa Ueda
    • 学会等名
      The 5th Asian Arden Conference
    • 発表場所
      愛知学院大学楠本キャンパス
  • [学会発表] Cyclodmaltononaose (δ-CD)の調製法の至適化(II)~生成時の共存物質の影響~

    • 著者名/発表者名
      松本すずか,佐野奈津子,小澤礼奈,田井裕太,遠藤朋宏,郡司美穂子,古石誉之,長瀬弘昌,上田晴久
    • 学会等名
      第30回シクロデキストリンシンポジウム
    • 発表場所
      くまもと県民交流館パレア
  • [学会発表] 大環状シクロデキストリンの精製~Cyclodmaltononaose (δ-CD)と固相抽出用充填剤との相互作用~

    • 著者名/発表者名
      倉石絵理菜,須崎陽子,森谷真咲,片山沙紀子,三平佳乃子,遠藤朋宏,郡司美穂子,古石誉之,長瀬弘昌,上田晴久
    • 学会等名
      第30回シクロデキストリンシンポジウム
    • 発表場所
      くまもと県民交流館パレア
  • [学会発表] β-シクロデキストリン類を用いたミルタザピンの溶解性改善に関する基礎的検検討

    • 著者名/発表者名
      古石誉之 ,関野晃平,長瀬弘昌, 遠藤朋宏,上田晴久
    • 学会等名
      第30回シクロデキストリンシンポジウム
    • 発表場所
      くまもと県民交流館パレア
  • [学会発表] エパルレスタットにおける可逆的多形間転移と結晶構造解析

    • 著者名/発表者名
      五十嵐涼太,長瀬弘昌,古石誉之,遠藤朋宏,上田晴久
    • 学会等名
      第22回有機結晶シンポジウム
    • 発表場所
      北海道大学札幌キャンパス学術交流会館
  • [学会発表] エパルレスタットの可逆的多形間転移および分子の立体配座に対する温度の影響

    • 著者名/発表者名
      五十嵐涼太,長瀬弘昌,古石誉之,遠藤朋宏,上田晴久
    • 学会等名
      第19回創剤フォーラム若手研究会
    • 発表場所
      日本大学薬学部
  • [学会発表] スルフォブチル-β-シクロデキストリンとアルギン酸プロピレングリコールを用いた三成分複合体によるクロザピンの溶解性向上

    • 著者名/発表者名
      関野晃平,古石誉之 ,長瀬弘昌, 遠藤朋宏,上田晴久
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本市総合体育館
  • [学会発表] フルルビプロフェン/リドカイン非晶質混合物の皮膚透過性の検討

    • 著者名/発表者名
      古石誉之,金田和寛,川村僚一朗,中込貴也,遠藤朋宏,長瀬弘昌, 伴野和夫,上田晴久
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会学術集会
    • 発表場所
      慶應大学薬学部芝共立キャンパス

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公開日: 2015-05-28  

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