白血球に特異的に発現するp57/coronin-1は、免疫細胞の機能制御に関連すると考えられている。私たちの研究グループは、白血球の貪食過程において、p57/coronin-1が一過性にファゴソームに局在すること、リン酸化されることによりファゴソームから解離すること、412番目のトレオニン残基(Thr-412)のリン酸化が起こることなどを明らかにしている。また、細胞内寄生細菌である結核菌を取り込んだファゴソームでは、本分子の解離が認められないことから、結核菌は本分子のリン酸化過程(ファゴソームからの解離過程)を調節することにより、細胞内寄生性を獲得していると考えられている。本研究は、p57/coronin-1を介した白血球の貪食機構の解明および細胞内寄生細菌(結核菌)の細胞内寄生機構の解明を目的としている。 H25年度は、p57/coronin-1のリン酸化に関与するリン酸化酵素の特定を試み、選択的阻害薬(Go6976、PKCαβ阻害薬)を用いた実験から、プロテインキナーゼC(PKC)αまたはPKCβの関与が示唆された。さらに、siRNAを用いたRNA干渉法およびin vitroキナーゼアッセイ法により、p57/coronin-1はPKCαによってリン酸化されることを明らかにした。 H26年度は、結核菌の細胞内寄生性に関連すると考えられているタンパク質であるLipoamide dehydrogenase C(LpdC)の発現プラスミドを作製し、p57/coronin-1との結合能について免疫沈降法にて解析した。その結果、p57/coronin-1とLpdCの結合が認められ、この結合は、Thr-412のリン酸化模倣体(アスパラギン酸置換体、T412D)では著しく減弱した。これらのことより、LpdCがp57/coronin-1に結合しThr-412のリン酸化を抑制することにより、結核菌は細胞内寄生性を発現していることが示唆された。
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