研究課題/領域番号 |
25870802
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 准教授 (10360207)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NIRS / 機能的結合 / 咬合 / 認知 |
研究概要 |
本研究は咬合調整を行う患者の治療前後において,(1)咀嚼刺激による認知機能の向上度を脳認知機能回路の賦活化から捉え,補綴治療による噛み合わせの改善が認知機能の維持・増進をもたらす神経科学的根拠を明らかにすること,(2)補綴治療手段の違いによる比較から高齢者の認知機能の維持・増進に最適な咬合の方法論を解明し,健康長寿社会の推進に貢献する咬合治療の意義を社会に還元すること,をゴールとしている。認知機能は脳の複数の皮質部位がネットワークを形成して協調的に働くことで実現される高次機能であることから,初年度は,脳機能計測実験を行って咬合刺激に関する認知機能を同定する解析手法の開発を中心に研究を進めた。実験では認知課題中の脳活動を前頭葉ならびに後頭葉からの近赤外分光法(Near-infrared Spectroscopy; NIRS)を用いて計測し,咬合咀嚼刺激を与えた場合と与えない場合における皮質間機能的結合性の有無をPhase Locking Value(PLV)により評価する手法の開発を行った。PLVはこれまで脳波や脳磁図データにおいて,認知課題遂行に伴う皮質間連絡の解析手法として提案されてきた統計的手法であるが,このPLVがNIRSデータにも適用できることを,シミュレーションならびに実データ解析を用いて明らかにした(NIRS-PLV)。その結果,視覚的な認知課題への注意が高まっている場合には,注意が引き起こされない場合に比べ,トップダウン的に注意を引き起こす前頭前野背外側部と,対側の周辺視覚野(V2/V3)との位相同期が有意に亢進する(皮質活動間の位相同期が高まる)ことが示された。また,咀嚼刺激を行った場合にはこの位相同期関係が変調することも示された。咀嚼刺激による認知脳活動の変調を評価する手法が確立でき,初年度の目的は達成されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Phase Locking Valueを応用したNIRSデータの機能的結合の解析法の開発が順調に進み,2年計画の本研究のうち初年度の目的として設定した「認知課題遂行中の皮質間ネットワーク活動の可視化」が達成されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通り,実際に咬合治療を受ける患者のデータへ開発した手法を適用し,「噛み合わせ治療の方針が認知機能の向上に与える影響の解明」「咀嚼刺激と認知機能とをつなぐ神経活動のクロストークの解明」を中心に研究を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
・連携している神奈川歯科大学において院生の研究補助を得ることができたため,被験者謝金・アルバイト謝金が予想より少額で収まった。 ・利用者分担しているNIRS装置の利用者が例年より多かったため,分担金の負担が少額で済んだ。 ・次年度以降予定している被験者謝金に充て,より多くの被験者数で実験を行う予定にしている。 ・より高いレベルのジャーナルに投稿するための英文校閲費用に充てる。
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