下顎にインプラントを埋入し,その上に義歯を装着することで咀嚼しやすさが向上するとされるインプラントオーバーデンチャー(IOD)治療の前後において,咀嚼時の感覚運動野ならびに前頭前野活動の活動パターンが,有歯顎者の活動パターンに近づくことが示された。また前頭前野では,IOD治療前では運動の計画をつかさどる前頭極が活動し不安定な顎位を意識的に制御しようとする脳活動が示唆されたが,治療後では前頭前野背外側部に活動の中心が移動し,口腔内感覚に対する認知活動が自動的かつ円滑に行われるようになるという皮質機能回路の変化が示された。脳機能計測による,補綴治療の適切さの定量評価が可能になると考えられる。
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