研究課題/領域番号 |
25870804
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐々木 由香 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70642057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭化鱗茎 / ネギ属 / 縄文時代 / 植物利用 / 土器付着炭化物 / ツルボ |
研究実績の概要 |
1)現生鱗茎標本の整備:本年度は、韓国でヒガンバナ科ネギ属アサツキとノビル、キジカクシ科ツルボ属ツルボの標本を入手した。日本ではヒガンバナ科ネギ属アサツキとノビル、ヤマラッキョウ、ヒガンバナ属ヒガンバナとキツネノカミソリ、ユリ科アマナ属アマナ、キジカクシ科ツルボ属ツルボの標本を入手した。上記の鱗茎形状の計測や炭化実験、炭化後の走査型電子顕微鏡による鱗茎組織の観察に加えて、生の鱗片組織を樹脂包埋法によるプレパラート製作を継続した。さらに生の状態で走査型電子顕微鏡で観察するために、眞空凍結乾燥法により乾燥させた。 これらの結果、新たにアマナとヤマラッキョウの2種について表皮細胞と葉肉細胞の形態把握が可能になった。鱗茎の断面構造で大きく分類した後、表皮細胞+葉肉細胞+その他の付属物で種レベルの同定が可能な点を見出した。
2)遺跡出土鱗茎同定の実践:土器付着鱗茎を重点に同定を行った。日本では縄文時代前期の福井県鳥浜貝塚、弥生時代前期~中期の庄・蔵本遺跡出土の鱗茎がツルボ型と分類でき、韓国でも新石器時代早期の細竹遺跡でツルボ型が見出された。当初の予想よりも時間的も地理的にも広域の範囲で鱗茎利用が確認できた。
3)土器内での鱗茎加熱実験:食用と土器付着状況の復元を行なうため、現生のノビルとツルボの鱗茎を用いて加熱実験また炭化実験を行った。容器が開口した状態では付着しにくい点が明らかになった。また鱗茎そのままでは付着しにくく、半割ないし輪切りの状態で加熱されていたことが推定された。またノビルは付着せず、ツルボのみ土器に付着して炭化する様相が観察できた。これまでの研究では、ツルボを用いた実験は行われておらず、実験の結果は、同定結果を支持する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、土器に付着して出土する炭化鱗茎は、縄文時代のごく限られた地域に出土すると推定されていたが、弥生時代でも利用が確認できた。また鱗茎は、現在でも食用されることがあるノビルやアサツキと思われていたが、これまでは現在はほとんど食用される文化がなくなっているツルボのみしか得られておらず、既往研究にはない成果が得られている。また実験の結果、土器内に加工されて入れられた可能性もあり、これまでの植物利用に新たな種類を加えたといえる。さらに、ツルボの利用は韓国でも確認され、東アジアの先史時代において鱗茎利用がどのようであったかを今後検討する必要が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
1)遺跡出土炭化鱗茎の同定:これまで採取した炭化鱗茎の同定を行い、種レベルの同定を行う。 2)現生鱗茎標本の整備:これまで採取した現生鱗茎の整理とデータ採取を重点的に行い、計測データや実験データの整備を行う。 3)成果の公表:前年度に引き続き、遺跡での実践例を学会等で報告すると共に、報告書と論文にまとめて公表する。編成鱗茎と遺跡出土鱗茎の同定法について査読誌に投稿する。
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