原発等の国際法違反でない行為によって生じた越境損害の責任主体について、国際法上の国家責任の理論で法的論拠を明確にすることは依然として困難である。その最大の理由は、現在では原発等の操業は国家の行為ではなく、民間企業が行う行為である点である。EUでは、環境責任指令が施行されており、同指令によると、環境損害に関し、汚染者(=事業者)が全ての責任を負うことが義務付けられている。同指令は、原発や油濁汚染等、特定の活動が適用除外されているが、グローバル化する国際社会における越境損害に伴う国際責任を考える上で、参照すべき法理論と考えられる。
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