本研究は、近代日本の乳幼児施設の二元体制の根拠とされている「教育」「ケア」概念に着目し、それぞれの概念の意味内容の変化について、「幼保一元化」をめぐる動向を中心に実証的に検討することで、従来の二元体制を超えた施設の役割・内実を問うことを目的としている。 研究の最終年度となる2014年度は、前年に収集したデータの内容分析を行うと共に、知見を総括することに主眼をおき、主として以下の二つの課題に取り組んだ。(1)「認定こども園」制度について、根拠法である「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」ならびに都道府県の水準での政策分析を行い、乳幼児期の子育ての場ならびに「認定こども園」像の内実を描出する。 (2)「認定こども園」制度ならびに「幼保一元化」という事象を手がかりに、乳幼児期の子育てにおける家族と施設の役割について検討を深める。 (1)については、前年度までに収集した「認定こども園」に関する政策文書ならびに各都道府県が制定している「認定こども園」に関する条例といったデータを用いて、政策文書において乳幼児期の子育てがどのように想定され、またその中で保育施設がどのような役割を果たすべきとされているのかについて、「教育」「ケア」概念を中心に検討を行った。 (2)については、20世紀における幼稚園・保育所の役割の推移ならびに2000年代における「認定こども園」制度の背景の検討を通じて、近代における乳幼児期の子育ての場を分析する枠組みを提示すると共に、今後の保育施設の役割について考察した。 これらの検討作業の結果は、2015年5月に開催された日本保育学会第68回大会において発表を行った。また、その成果の一部は、2015年2月刊行の金井淑子・竹内聖一編『ケアの始まる場所』(ナカニシヤ出版)に掲載されている。
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