主張性は自分の言いたいことを主張する「自己表明」と,その際に相手のことを考慮する「他者配慮」の側面からなる自己表現のスキル・行動傾向を指す。対人適応や精神的健康に役立つことが確認され,学校や職場におけるトレーニングも実施されている。また協調的文化の日本においては,「他者配慮」を重視した独自の主張スタイルが,適応の1つの形として報告されている(高木,2001)。しかしこれまでの研究では,「他者配慮」と対人適応・精神的健康との関連は,ポジティブおよびネガティブな結果が混在しており,それに対する実証的な検討はなされていなかった。 よって本研究では,他者配慮の効果について包括的に検討を行うとともに,効果的な促進方法の開発を試みることを目的とした。 まずは他者配慮の効果を包括的に把握するために,国内外の関連論文・文献の記述を収集するとともに,大学生を対象に他者配慮に関するエピソードや動機について自由記述調査を実施した。さらに得られた記述を分類し「他者配慮動機」に関する尺度を作成し,心理的要因との関連について検討を行った。また「他者配慮の促進方法の開発」について,大学生に対する予備面接およびトレーニングを実施した。その結果,「評価懸念」による他者配慮と「自他尊重」による他者配慮の違いを理解することが有効であることが示唆された。さらに成人(20~60代)に対するWEBアンケートを実施し,年代による他者配慮の違いについて確認を行った。 以上の研究結果より,他者配慮に関する包括的な知見が得られ,他者配慮のポジティブな側面を促進しうることが確認された。この点で,今後の主張性トレーニングや,日本における主張行動の理解に役立つと考えられる。
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