研究課題/領域番号 |
25870814
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
玉置 健一郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (80409664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Empirical likelihood |
研究実績の概要 |
2013年度では,残差のピリオドグラムを用いた経験尤度を構成し,漸近理論の構築とシミュレーション分析を行ったが,この手法では,一般的に有効な推定量は得られない.それ故,2014度は,この研究結果の拡張を行った.具体的には,Whittle尤度を用いた推定関数と残差のピリオドグラムを用いた推定関数を合わせた推定関数を考え,これらを用いて経験尤度を構成し,漸近理論の構築とシミュレーション分析を行った.その結果,長所を引き継ぎつつ,有効な推定量も同時に得られることが明らかになった.つまり,有効なパラメータ推定と,ラグを十分に大きくする必要がない残差分析を同時に行うことが出来た.シミュレーション分析では,周波数領域における従来の推定手法であるWhittle尤度を用いた疑似最尤法と比較して,近似の精度は同等であることが示された.
さらに,この経験尤度をARMAモデルの次数選択に応用した.つまり,残差分析によるモデル診断の結果を用いて次数を選択することを考えた.モデル選択基準ではAICやBICなどを用いるのが一般的であるが,多くの場合,AICは過大推定し,BICは過小推定する傾向がある.シミュレーション分析では,経験尤度による次数選択は,多くの場合,AICとBICの中間であることが示された.特に,標本数が十分に大きくない場合や,パラメータの真値が0に近く,誤選択が起こりやすい場合では,BICよりも非常に精度が良いことが明らかになった.
これらの結果により,ARMAモデルを用いた分析において,次数選択,パラメータ推定,残差分析の3つを経験尤度法で同時に行うことが出来ることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014度は,前年度の結果を拡張し,ARMAモデルを用いた分析において,次数選択,パラメータの有効推定,残差分析の3つを経験尤度法で同時に行うことが出来ることが明らかにした.これらの漸近理論の構築やシミュレーション分析は概ね完成しており,それ故,研究は順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,シミュレーション分析と実データ分析に重点的に行う.次に,これらの諸結果をGARCHモデルなどの金融時系列モデルに拡張できるかについて研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を2つ計画していたが,1つは予定が合わず,もう1つは両足を怪我した為,出張を取りやめた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要な書籍が不足しているので,それらを購入する予定である.
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