本研究は、中国内陸部の農村女性の出移民と不動性についての考察である。中国をフィールドとした従来の実証的ジェンダー研究は、沿海部都市に出稼ぎする女性や、夫が出稼ぎし村に残る女性(「留守婦女」)を取り上げてきた。本研究はこうしたケースのほか、近距離での移動にも目を向けた。山西省でのフィールドワークでは近距離を移動する男女のケースを多くとらえた。高齢になって土地を返納した後の家計困難を解決するため県城で家事労働者として働く女性や、小学校の統廃合のなかで子の就学のために県城に移動する女性など、移動する/しないという選択の背景にはさまざまなジェンダー関係があることが明らかになった。
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