本研究では、広告競争における広告効果の不確実性について、理論面、実証面双方から分析を行った。 まず、理論面では広告競争を不確実性がある微分ゲームとして定式化した。そして、不確実性下での閉ループ解(最適広告費投入戦略)についてファインマン・カッツ解を導出した。さらにこの問題における企業の期待価値についても数値的に導出した。この過程で、3つのモデリングが存在する広告効果モデルにおいてヴィダル・ウォルフ型のモデリングのみ、本研究で対象とする状況では適用可能であることが分かった。また、この数値計算の際に計算時間の短縮に繋がる方法についても考案し、適用することができた。 次に実証面については、理論モデルをデータ(ソルティ・スナック)に適用し、広告効果の不確実性に対し、リスク態度を明らかにした。データをそのまま適用すると、一般的なボラティリティの大きさを遥かに上回る値となるため、季節調整等を行いデータの一般化をした。そのデータに理論モデルを当てはめ、各プレイヤーのリスク回避度を推定したところ、予期される値より遥かに大きな値となった。このことは金融のポートフォリオ運用問題における実証結果と同様の結果となり、各プレイヤーが経済的合理的行動をとってはいないことを示唆していると考えられる。
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