研究課題/領域番号 |
25870822
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石川 涼子 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (20409717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多文化主義 / カナダ / 合理的配慮 |
研究実績の概要 |
本年度は女性の自由と権利を保護するための多文化主義的な施策について、特に民主的な熟議を通じた交渉と妥協に注目して考察を進めた。研究発表 "Mulcitulturalism for Women?"では、Susan Okin, “Is Multiculturalism Bad for Women?” (1999) に見られるような、多文化主義は女性を抑圧するような文化の温存に寄与するためリベラルではないという批判を念頭に、このような批判を乗り越えるために民主的な熟議が有効でありうることを述べた。特にカナダのケベック州で2008年にブシャール=テイラー委員会により発表された合理的配慮をめぐる報告書をとりあげ、合理的配慮概念を文化的差異への配慮に拡張して適用することでリベラルではないとされる文化集団に属する女性の権利を保護することに寄与できる可能性を考察した。 また、最終年度に向けて合理的配慮概念の日本の文脈への応用についても考察を進めた。日本でも平成28年4月から障害者差別解消法が施行され、障害者に対する合理的配慮の不提供が禁止された。ブシャール=テイラー委員会報告書ではこの合理的配慮の概念が文化的差異にも拡張して適用しうるとして議論されており、EU委員会でもこのような拡張可能性について報告書が出版されている。そこで市民の文化的多様性の幅が広がることにより生じる文化間摩擦を調整する方策としての合理的配慮について、カナダでの議論を軸として文献研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究費の受給は現勤務先への異動と同時に決まった。新しい勤務先での業務の全体量が把握しにくく研究時間を確保することが難しかった。また、受給開始時に1歳の幼児の育児中でもあり、このことも研究時間確保の困難につながった。そのため研究機関の延長を申請し、承認していただいた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本研究の最終年度であるため、大学業務を効率的にこなし、研究時間を確保する努力をする。具体的には、9月に国内学会での口頭報告を予定しており、本年度中に国際学会での報告ができるよう応募を進めている。これらの報告内容を論文としてまとめ、年度内に学術雑誌掲載の目処をつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費受給決定と同時に現勤務先に異動したため、当初は大学業務の全体量が把握しきれずに研究を計画的に進めることが難しかった。その遅れが現在にも響いており、昨年度末に研究機関の延長を申請し、承認された。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は夏季休暇中にカナダへの研究出張を行うとともに、海外の国際学会での研究発表を計画している。
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