研究実績の概要 |
最終年度である本年は、主に次の三つの研究活動を行った。 第一に、オーストラリア・シドニーのInstitute for Social Justice, Australian Catholic Universityで開催されたセミナーDecolonizing Feminismに参加し、Do Muslim women need freedom?といったテーマのセッションを通じて、少数派文化に属する女性についてのフェミニズム理論についての最新の知見を得ると共に、アジアを中心とした各国からの参加者と本研究について意見交換を行った。 第二に、第41回日本カナダ学会年次大会において、研究報告「合理的配慮と正義:文化間コンフリクトへの熟議アプローチ」を行った。「合理的配慮」に関するブシャール・テイラー報告書について、近年の熟議民主主義に関するフェミニズムの観点からの研究を踏まえてその位置づけを明らかにすることを試みた。 第三に、本研究の成果を論文にまとめた。本研究を通じて明らかになったことは、文化間コンフリクトへの合理的配慮というアプローチが持つ熟議を中心とした反省的な対処法は、文化的な多数派と少数派のいずれにとっても利益となりうるということである。しかし、依然として残る課題は、政治的正当性の問題である。市民の間で激しい倫理的対立があるイシューについて、またそのイシューに関わる圧倒的な多数派と少数派が存在する場合に、民主的で正当性を持った政策を作るためには何が必要か。この点についてさらなる考察が必要である。本論文は、現在投稿中である。
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