本研究計画では、台湾を例として、近代国家による国家的統治が先住民族社会に与えた影響について、特に統治者が被統治者である先住民族社会の状況を可視化することを目的に展開した措置、政策およびそれらが現地社会に与えた影響や両者の相互作用―複雑な影響関係―について具体的に明らかにすることを目指して調査・研究を行った。 初年度の平成25年度から調査を始めた。公的書類である戸籍についての調査から始め、先住民族のインフォーマントへの聞き取り調査と文献調査を行った。また台湾の研究機関との情報交換も進めることができた。 二年目の平成26年度にも現地調査を行い、戸籍およびその記載事項についての調査を進展させることができた。また同年度中には本テーマに関連する研究集会などを開催して、他地域の研究者との対話を進め、特に戸籍と社会との関係については当初予定していた以上の重要性を持っており、必要な研究作業も予想以上であることが明らかになった。 平成27年度にはこれまでの調査を受けて戸籍と地図についての現地調査を行い、特に戸籍の記載情報のうち姓名に関する調査に進展があった。またこのテーマに関連して、台湾から研究者を招聘して研究ワークショップを開催し、研究成果を社会に発信することができた。 そして最終年度(28年度)はこれまでの調査結果の内容を点検し、補足調査を行って調査の完成を目指した。平成28年夏に台湾現地、台湾原住民族(パイワン族)居住地域において研究報告を行い、調査対象社会(先住民族社会)への知識の還元を実施することができた。また日本で開催した研究ワークショップにて学術的な研究成果報告を行うことができた。研究成果については、最終年度終了後も公開を目指す予定である。
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