本研究は明治期の修身教育イデオロギーがどのように形成されていたかを明らかにするため、修身教科書に掲載された口承文芸の変容と伝記テキストとの関連を考察した。研究方法は、全国に散在している修身教科書を調査し分析した。結果は次の3点である。1)小学校の修身教科書に掲載されたイソップ寓話・グリム童話・日本昔話の新しいテキストは見つからなかった。2)文部省がつけた付箋は、日本の神話に関連する修正が多い傾向が示唆された。3)イソップ寓話と関連付けられていた二宮金次郎の伝記は、徐々に〈父-子〉から〈母―子〉へと結びつきを強めていくことがわかった。寓話と伝記の関連性を考察するための伝記側の資料を整えられた。
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