研究実績の概要 |
1953年8月にイランのモサッデク政権を打倒した、米アイゼンハワー政権によるクーデター計画と世論工作について理解するために、米国中央情報局(CIA)の極秘文書(CIA Clandestine Service History, "Overthrow of Premier Mossadeq of Iran, November 1952-August 1953," March 1954, by Dr. Donald Wilber)を中心に精読した。 平成25年度に実施したアメリカ合衆国文書(FRUS)及びアメリカ国務省極秘文書(Confidential U.S. State Department Central Files Iran : Foreign Affairs and Internal Affairs 1950-1954)の分析結果と、CIA文書の分析結果を比較検討して、CIA、国務省そして国家安全保障委員会等アクター毎の役割と事件の全体像の把握に努めた。その上で、主にテヘラン・バーザールやイスラーム宗教指導者を対象として行われた世論工作の重要性の位置づけを試みた。分析の過程で、CIA文書と国務省極秘文書の間に、1953年8月クーデターへのアメリカの関与の描写に大きな齟齬があることを発見した。国務省文書は、モサッデク政権打倒クーデターにCIAが関与したことを公的には否定しようとする米政府の意図を反映していた可能性が考えられる。 その研究結果を、ドイツ現代中東研究学会(The German Middle East Studies Association for Contemporary Research and Documentation, DAVO)で報告を行った。その際、イランで発行された新聞等の調査の必要性を、セッションに参加していた研究者から指摘された。従って、来年度は、まだ読了していないアメリカ国務省極秘文書の通読に加え、ペルシア語の新聞資料等の分析を進めることとしたい。
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