研究課題/領域番号 |
25870830
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
齋川 貴嗣 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 研究員 (30635404)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際文化交流 / ユネスコ / 日本 / 文化外交 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究実績について特に4点指摘したい。第一に、平成26年7月から8月にかけて、パリのユネスコ・アーカイブスで史料調査を行った。特にCAMEから設立初期までの時期を中心に調査を進め、さらに1951年の日本のユネスコ加盟に関わる文書も収集することができた。 第二には、平成26年9月および平成27年2月に、台北の中央研究院近代史研究所档案館および国家図書館において史料調査を行った。本調査は、1949年に設置されたユネスコ東京事務所の代表李煕謀の活動に関わる史料を収集することを目的としており、これまで明らかになっていなかった李煕謀の経歴や思想に関する文書を入手することができた。また、ユネスコ対日プログラムにおける中華民国のイニシアティブ、日本のユネスコ加盟における中華民国の態度に関する外交史料も収集することができた。 第三に、平成26年11月に日本国際政治学会2014年度研究大会において「知的協力から国際文化交流へ―1930年代国際連盟知的協力国際委員会における理念変容」と題する研究報告を行った。この研究報告では、ユネスコの組織的前身であるICICの理念変容を主に検討しつつも、上記ユネスコ史料館での調査を踏まえ、文化交流における国家と個人、普遍文明と国民文化という二つの緊張関係からICICとユネスコの連続性/不連続性について言及した。 第四に、デンマーク・オールボー大学を中心としたユネスコ研究グループが出版準備を進めているユネスコ設立70周年記念論文集への寄稿が決定し、平成26年12月に日本のユネスコ加盟に関する論文を提出した。論文集は、Making a Difference: Seventy Years of UNESCO Actionsというタイトルで平成27年11月にPalgrave Macmillanから出版予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ユネスコ・アーカイブスおよび中央研究院近代史研究所档案館等での史料調査を実施することができ、研究は概ね順調に進展していると言える。また、ユネスコ設立70周年記念国際論文集への寄稿を果たした。本論文"Returning to the International Community: UNESCO and Postwar Japan, 1945-1951"は、戦後日本の民間ユネスコ運動の生成、ユネスコの対日認識とプログラム、GHQのユネスコ認識、日本のユネスコ加盟の政治過程を検討したものであり、管見の及ぶ限り、日本のユネスコ加盟を歴史的に明らかにした英語論文としては初めてのものである。さらに、ユネスコの対日プログラム策定における中華民国のイニシアティブ、日本を舞台にしたユネスコの連合軍占領統治への関与、日本の加盟プロセスにおける冷戦との関わりにも論及しており、単なる日本外交史ではなく、グローバル・ヒストリーとしてユネスコ史を描いた点で意義があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記国際論文集への寄稿論文を踏まえ、研究最終年度である本年度は1951年の加盟後の日本とユネスコの関係へ研究の射程を広げる。特に、1970年代後半からユネスコが開始した「新世界情報秩序」への日本の対応、および米英政府の脱退に対する反応を検討する。さらに、2001年の「文化の多様性に関する世界宣言」に結実する冷戦後のユネスコの理念、松浦晃一郎によるユネスコ改革といった現代的問題にも踏み込みたい。これらの課題に対して、ユネスコ・アーカイブスにおける史料調査を再度実施する予定である。また、外務省外交史料館、国会図書館憲政資料室など国内史料館、および松浦晃一郎氏などユネスコ元職員に対するインタビューも実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍が在庫切れであったため。
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次年度使用額の使用計画 |
古書店等を利用して、当該書籍を次年度に購入する予定である。
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