研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度である平成27年度の研究実績について特に3点指摘したい。 第一に、平成27年10月28日から29日までパリのユネスコ本部で開催されたユネスコ設立70週年記念国際会議に参加し、初期ユネスコの対日政策および日本のユネスコ加盟過程に関する報告を行ったことである。会議には世界各国からユネスコの歴史研究に携わる研究者が参集し、ユネスコ史研究に関する研究蓄積の共有と活発な意見交換が行われた。 第二に、平成27年11月1日に開催された日本国際政治学会2015年度研究大会分科会セッションE-3国際交流Ⅲにおいて討論者を務めたことである。日本におけるユネスコ研究を国際関係史、日本外交史の立場からリードする都丸潤子教授(早稲田大学)、潘亮教授(筑波大学)の報告に対して、ユネスコ史研究の立場からコメントを行った。分科会には学会員だけでなく、長く日本の民間ユネスコ運動を主導してきた仙台ユネスコ協会の方々もご来場いただき、研究・実践の両面から実りある議論が交わされた。 第三に、平成28年2月にPalgraveからA History of UNESCO: Global Actions and Impactsが出版されたことである。本書は、デンマークのオールボー大学教授Poul Duedahl氏を中心としたユネスコ・グローバル・ヒストリー・プロジェクトの研究成果であり、本研究課題代表者の論文("Returning to the International Community: UNESCO and Postwar Japan, 1945-51")も収められている。初期ユネスコの対日政策と日本のユネスコ加盟を連合軍占領統治ならびに冷戦の文脈から検討した本論文は、本研究課題の最終的成果であり、また今後の研究の出発点になると考えている。
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