研究実績の概要 |
平成26年度は研究①選択的脳冷却実験のデータ解析、まとめを行った。研究①では効率的な脳冷却方法を検討するため、頭部または頸部の冷却実験を行った。実験でヒトの脳温を直接測定することは難しいが、鼓膜温は脳表面の温度を反映すると報告されている (Mariak, White, Lyson, & Lewko, 2003)。そこで鼓膜温を脳温の指標とし、正常体温および高体温の条件において3種類の頭部または頸部冷却を行い脳温へ及ぼす影響を検証した。健康な成人男性8名を対象とし、同一被験者に対して4回の実験を行った(①扇風機で顔面に送風、②額を温度刺激装置で冷却、③頚部を温度刺激装置で冷却、④冷却無し:コントロール施行)。鼓膜温、食道温、皮膚温、発汗量、皮膚血流、血圧、心拍、温度感覚、温熱的快適感を測定した。鼓膜温は熱電対先端に薄く脱脂綿を巻き、鼓膜に接触させ測定した。正常体温時は、いずれの施行においても鼓膜温と食道温の差は認められなかった。高体温時には、顔面への送風で鼓膜温は食道温より有意に低い値を示した。しかし、額冷却、頸部冷却、コントロール施行では鼓膜温と食道温の差は認められなかった。研究①では高体温時に顔面へ送風することにより脳冷却効果が得られる可能性が示された。また脳冷却が起こると体温を下げる反応(皮膚血流、発汗)が抑制され深部体温の上昇を促進してしまう可能性も考えられるが、高体温時の顔面送風では発汗が抑制される傾向はあるものの、皮膚血流は維持されており、深部体温が上昇することは無かった。
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