研究課題/領域番号 |
25870832
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小野 真由美 岡山大学, グローバル・パートナーズ, 講師 (00609688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ケアの越境化 / 国際退職移住 / ロングステイ / メディカルツーリズム / 介護移住 / マレーシア / タイ / フィリピン |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究実績は以下のとおりである。 Mobilities誌に国際退職移住の商品化の過程を分析した英文査読論文、Pan-Japan誌に日本人高齢者のマレーシア移住の社会文化的側面を論じた英文査読論文、和文図書『世界民族百科事典』のライフスタイル移住に関する和文論文、英文図書“Reframing Diversity in the Anthropology of Japan in Japan”に掲載された日本人高齢者移住者のコミュニティ生成を分析した英文論文、および“Ageing and the Digital Life-Course”に掲載された日本人高齢者移住者のICT能力がネットワーク形成に与える影響に関する英文論文を出版した。 国際民族学人類学連合(IUAES)では、分科会「人の移動のキーワード:比較文化の観点から」において、日本と欧米における退職移住(retirement migration)概念の比較検討に関する発表を行った。次に、国際シンポジウム「アジア諸国における医療ツーリズム:現状とその課題」において、日本からの退職移住の進展により受入れ社会の高齢者介護のサービス化を促進する側面を分析し、発表を行った。また、スロヴェニア・リュブリャナ大学で開催されたヨーロッパ日本研究協会の研究大会において、現代日本社会における男性性の再考に関する分科会において、日本人男性が東南アジアに移住する行為がもつ自己の意味づけに関する分析について発表を行った。さらに、マレーシアで開催されたアジア太平洋公衆衛生学術コンソーシアム(APACPH)研究大会において、外国人であるという属性と国籍がマレーシアにおいてヘルスケアのアクセスに与える影響の分析に関する共同発表を行った。このほか、国立民族学博物館主催の講演会、タイ・チュラロンコン大学アセアン研究センターにおいて講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、現地調査および成果報告の上で達成度の高い一年であった。上述の研究実績に加え、成果発表の場では、本研究に関連する研究者との意見交換やネットワークを広げられた。 平成25年度は、当初計画よりも現地調査の訪問国数を減らし、日本国内で患者や要介護高齢者の国際移動に関わるアクターへの聞き取り調査と資料収集によってアジアにおける患者や要介護高齢者の当該地域への国際移動および介護産業の海外進出状況に関する動向調査に重点をおいた。この成果を踏まえ、平成26年度には、タイと中東(アラブ首長国連邦ドバイとオマーン)において現地調査を実施した。 タイのバンコクにおける現地調査では、バンコク市内および近郊の民間病院、日系介護事業者、介護学校、日系人材派遣会社、現地旅行代理店、高齢移住者の市民団体、および日本人の多く居住する地区における日本人高齢移住者への聞き取りを行った。現地調査からは、日本からタイへの患者、要介護高齢者の国際移動を促進させる要因や医療介護産業の動向、さらに現地での移住生活が長期間にわたる日本人高齢者のネットワークと生活実態を把握することができた。 ドバイとオマーンにおける現地調査では、本研究の調査対象国であるマレーシア、タイ、フィリピンへ医療目的で渡航、滞在する外国人患者の送り出しを積極的に奨励しているアラブ首長国連邦ドバイとオマーンの医療事情、および医師、看護師の就労状況、および日系クリニックの実態からみた医療の国際化に関する調査を行った。具体的には、両国の医療機関や医療特区の訪問、さらに中東最大規模の医療展示会であるアラブヘルスに参加し、各国の医療行政担当者、医療機器メーカー、医療機関の担当者に聞き取り調査を行った。調査の結果、中東からみた医療サービスの越境化と東南アジアとの医療交流の現状、および日本の医療機関との医療交流の現状を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、当初の計画では平成26年度で終了を予定していた。しかし、研究の進展により、中東調査や研究成果発表の機会に恵まれ、当初の研究項目や成果発表の予定に追加で研究活動を実施することができた。その結果、当初の計画で予定していたフィリピンでの現地調査の実施に関し、平成27年度に繰り越す必要が生じた。したがって、本研究は一年間の延長申請を行い、フィリピンでの現地調査を遂行し、調査項目をすべて達成した上で、最終報告を実施する予定である。 平成26年度は、研究成果発表の機会に恵まれた。これらの成果発表の場では、本研究に関連する研究を行っている海外の研究者との交流の機会が得られた。とくに、マラヤ大学の研究者との交流、チュラロンコン大学アセアン研究センターの研究者との交流は、今後の研究の進展の上でも貴重な交流の機会であった。 平成27年度は、フィリピンへの高齢者移住に関して日本国内とフィリピンにおいて現地調査を重点項目として実施する。日本国内では、主に首都圏で開催される高齢者移住を促進する市民団体の活動現場や旅行会社、および移住・医療介護事業者等の高齢者移住の送り出しに関わる人々への聞き取り調査を行う。さらに、フィリピン(マニラ)での現地調査をおこない、民間病院、日系介護事業者、介護学校、日系人材派遣会社、現地旅行代理店、高齢移住者の市民団体、および日本人の多く居住する地区における日本人高齢移住者への聞き取りを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、当初の計画では平成26年度で終了を予定していた。しかし、研究の進展により、中東調査や研究成果発表の機会に恵まれ、当初の研究項目や成果発表の予定に追加で研究活動を実施することができた。その結果、当初の計画で予定していたフィリピンでの現地調査の実施について平成27年度に繰り越す必要が生じた。したがって、本研究は一年間の延長申請を行い、フィリピンでの現地調査を遂行し、調査項目をすべて達成した上で、最終報告を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、日本からフィリピンへの患者や要介護高齢者の国際移動に関わるアクターへの聞き取り調査と資料収集をおこなう。日本国内では、主に首都圏で開催される高齢者移住を促進する市民団体の活動現場や旅行会社、および移住・医療介護事業者等の高齢者移住の送り出しに関わる人々への聞き取り調査を行う。 また、フィリピン(マニラ)での現地調査をおこない、民間病院、日系介護事業者、介護学校、日系人材派遣会社、現地旅行代理店、高齢移住者の市民団体、および日本人の多く居住する地区における日本人高齢移住者への聞き取りを行う。
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