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2014 年度 実施状況報告書

真核細胞モデルを視野に入れた内部に区分けのあるベシクル系の構築と利用

研究課題

研究課題/領域番号 25870837
研究機関神奈川大学

研究代表者

鈴木 健太郎  神奈川大学, 理学部, 外部資金雇用研究者 (60512324)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードジャイアントベシクル / ケージド化合物 / 紫外線応答性 / 二重ベシクル / 人工細胞
研究実績の概要

本研究では、種々の水溶液を内水相として持つ小ベシクルの分散液を、より大きなベシクルの内部に封入した「二重ベシクル」を作製し、さらに、紫外線のような非侵襲な外的刺激を用いて、外側のベシクルに影響を与えることなく、封入された小ベシクルだけを開孔させることで、外側のベシクルの内水相の状態を変化させられる系の構築を目指している。研究二年目となる本年度の成果概要を以下に示す。
(1)ベシクル内に種々の物質を封入するには、内容物にあわせたベシクル膜組成が重要となる。そこで、紫外線応答性リン脂質に加えて、双性イオン型リン脂質POPC、アニオン性リン脂質POPGおよびコレステロールからなるベシクルを種々の膜組成で調整し、紫外線照射によりベシクル内容物の放出を蛍光顕微鏡で直接観察した結果、紫外線応答性リン脂質含有量が10 mol%程度であっても、高圧水銀灯からの紫外線を数秒当てただけで内容物の放出が可能な光応答性ベシクルとして機能することを確認した。
(2)1で見出した組成を参考に、光応答性ベシクルを小ベシクルとした二重ベシクルを調整し、その紫外線応答を顕微鏡により確認した。その結果、外側のベシクルは保ったまま、内側のベシクルに封入されていたピラニンが、周辺の水相(外側のベシクルの内水相)に放出されることが確認された。この変化は、紫外線応答性リン脂質を含まない二重ベシクル系では起こらなかった。
(3)オレイン酸のケージド化合物からなる油滴が、紫外線照射前後にしめす動的挙動について詳細な顕微鏡観察を行った。紫外線を連続照射した場合は、光源に向かって油滴が移動する正の走光性が見られた。また、短時間の紫外線照射においては、紫外線照射に遅れて運動が出現する、特徴的な自発運動ダイナミクスが観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大ベシクルに封入された小ベシクルの内封物を、紫外線によって小ベシクル外部(大ベシクル内水相)へと放出できる二重ベシクルという、本研究課題で提案した最も重要な仕組みの構築に、本年度は成功した。現時点では、小ベシクル内水相へのモデル内封物として、水溶性蛍光色素ピラニンを用いているが、本年度得られた知見を用いて内容物と膜との相互作用を調整することで、ピラニン以外の様々な水溶性物質を封入し、それらを紫外線により放出することが可能である。すでに、当該年度末の時点で、DNAの封入に関しては着手しつつある。これによって、計画段階で26年度以降として発案した、内外膜内容物間での相互作用および内膜内容物と外膜との間の相互作用を誘起する、紫外線応答性二重ベシクルを実現するための基盤が整ったと考えられる。
さらに、研究を進める中で見出した、ケージドオレイン酸油滴に見られる特異な自発運動ダイナミクスについても、着実に進行しつつある。

今後の研究の推進方策

紫外線照射により小ベシクル内容物を大ベシクル内水相に放出できる二重ベシクル(今年度構築)を利用して、その特色を活かした以下の二つの系を計画書に提案している。(1)小ベシクルからの物質放出をきっかけとする化学反応系を二重ベシクルに封入し、紫外線と無関係な反応系に対する紫外線応答性の付与。(2)小ベシクルから放出された物質が大ベシクルの膜に内側から相互作用することで起こる形態変化。
1に関しては、計画書にある酵素反応による生化学反応系を封入した系の構築を目指すと共に、より有機化学の特色を活かした系として、シュウ酸ジフェニル化合物と酸化剤による化学発光の系の導入を試みたい。
2に関しては、予備的実験として、すでに小ベシクルにDNAを封入した二重ベシクルが形成可能なことを確認している。この知見に基づき、大ベシクル膜にカチオン性脂質(DDABなど)を加えカチオン膜とし、紫外線照射によって小ベシクルより放出されたポリアニオンであるDNAが、ベシクルの内側から接着することによって引き起こされるダイナミクスを顕微鏡により直接観察し、膜の物理の専門家と相談しながら、そこにある現象の解明を行う。

次年度使用額が生じた理由

本研究を遂行する上で重要な紫外線応答性リン脂質の合成について本年度利用分を合成することにしていたが、昨年度に当初の予定より高い効率で合成されたため、今年度必要分を十分賄うことができたため、本年度予定していた合成に必要な諸経費が抑えられた。

次年度使用額の使用計画

研究は、基本的には計画通りに遂行する。そのうえで、故障により使用できなくなっていた高解像度CCDカメラシステムの修繕を行い、より詳細な顕微鏡観察が行える環境を整える。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Magnetic Manipulation of Nucleic Acid Base Microcrystals for DNA Sensing2014

    • 著者名/発表者名
      Yuri Mizukawa, Kentaro Suzuki, Shigefumi Yamamura, Yoko Sugawara, Tadashi Sugawara, Masakazu Iwasaka
    • 雑誌名

      IEEE Trans. Magn.

      巻: 50 ページ: 5001904-1-4

    • DOI

      DOI:10.1109/TMAG.2014.2328633

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 自らが増殖する人工細胞の化学構築2014

    • 著者名/発表者名
      菅原正, 鈴木健太郎
    • 雑誌名

      高分子

      巻: 63 ページ: 382-384

  • [雑誌論文] 分子システムとしてつくる人工細胞2014

    • 著者名/発表者名
      菅原正, 鈴木健太郎, 栗原顕輔, 豊田太郎
    • 雑誌名

      豊田研究報告

      巻: 67 ページ: 63-70

  • [学会発表] DNA添加によるカチオン性ベシクル表面状態の変化2015

    • 著者名/発表者名
      亀田恵介・廣石達也・鈴木健太郎・菅原正
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] 紫外線応答型二重ベシクル2015

    • 著者名/発表者名
      町田巧太郎・伊藤愼弥・中島拓磨・鈴木健太郎・山口和夫・菅原正
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] How Self-proliferative Vesicle-based Protocell Acquire Responsibility and Recursibility2015

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Sugawara, Kensuke Kurihara, Kentaro Suzuki, Taro Toyota, Muneyuki Matsuo
    • 学会等名
      BIT's 1st Annual World Congress of Smart Material-2015
    • 発表場所
      釜山(韓国)
    • 年月日
      2015-03-23 – 2015-03-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 分子レベルの外場応答が導くマクロ集合体のモルフォロジー2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木健太郎
    • 学会等名
      第一回 ミクロとマクロをつなぐ次世代科学
    • 発表場所
      神奈川
    • 年月日
      2015-03-16
    • 招待講演
  • [学会発表] UV-sensitive Vesicle-in-vesicle2015

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Machida
    • 学会等名
      The 10th International Symposium on the Kanagawa University - National Taiwan University Exchange Program, Taiwan
    • 発表場所
      台北(台湾)
    • 年月日
      2015-03-12 – 2015-03-15
  • [学会発表] 分子が探る水和水の構造とダイナミクス2015

    • 著者名/発表者名
      菅原正, 鈴木健太郎
    • 学会等名
      公益財団法人 新世代研究所主催 水和ナノ構造研究会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-03-12
    • 招待講演
  • [学会発表] How could a model protocell acquire identity as life through autonomous responses towards external stimuli?2014

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Sugawara, Kensuke Kurihara, Muneyuki Matsuo, Taro Toyota, Kentaro Suzuki
    • 学会等名
      4th Symposium on Artificial Life and Biomimetic Functional Materials
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-11-28
    • 招待講演
  • [学会発表] Self-driven motion of oil droplets launched by UV irradiation2014

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Suzuki, Naoyuki Nakayama, Tadashi Sugawara
    • 学会等名
      4th Symposium on Artificial Life and Biomimetic Functional Materials
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-11-28
    • 招待講演
  • [学会発表] ケージドオレイン酸油滴に見られる特異な自発運動ダイナミクス2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木健太郎・中山直之・菅原正
    • 学会等名
      第8回 分子科学討論会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2014-09-21 – 2014-09-24
  • [学会発表] 紫外線応答型ベシクルを目指した珪藻土吸着法によるリン脂質合成2014

    • 著者名/発表者名
      町田巧太郎・伊藤愼弥・中島拓磨・鈴木健太郎・菅原正
    • 学会等名
      第25回 基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2014-09-07 – 2014-09-09
  • [学会発表] How Prebiotic Materials Collaborate in a Vesicle-based Protocell2014

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Sugawara, Muneyuki Matsuo, Kensuke Kurihara, Taro Toyota, Kentaro Suzuki
    • 学会等名
      OQOL2014, Open Questions on the Origin of Life 2014
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-07-12 – 2014-07-13
  • [学会発表] Constructive Approach towards a Vesicle-based Protcell2014

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Sugawara, Muneyuki Matsuo, Kensuke Kurihara, Taro Toyota, Kentaro Suzuki
    • 学会等名
      Origins2014, 2nd ISSOL-The International Astrobiology Society and Bioastronomy (IAU C51) Joint International Conference
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      2014-07-06 – 2014-07-11
  • [備考] 神奈川大学 理学部 化学科 菅原研究室

    • URL

      http://www.chem.kanagawa-u.ac.jp/~sugawara/

  • [備考] suzukiscientia

    • URL

      http://suzukiscientia.web.fc2.com

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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