研究課題
若手研究(B)
平成25年度は脳血管攣縮治療薬ファスジルと,新規に口腔扁平上皮癌にも適応になった分子標的薬セツキシマブの口腔扁平上皮癌細胞(HNSCC)への影響について検討を行った。HNSCCにファスジルの添加培養を行った結果,HNSCCにおいてファスジルは抗腫瘍ケモカインBRAKの遺伝子発現促進作用を介したBRAKタンパク合成促進作用があることが確認された。またBRAKは細胞外に分泌されることにより腫瘍抑制効果を発揮するが,ファスジルにはHNSCCにおいてRhoA/ROCK経路の阻害によるBRAKの細胞外分泌促進効果があることをが確認された。更にヌードマウスにHNSCCを移殖し,ファスジル投与の有無による腫瘍発達を比較検討したところ,ファスジル投与群において腫瘍発達が有意に抑制された。これはファスジルが口腔扁平上皮癌治療における新たな分子標的薬となりえることを示す知見である。この結果は現在論文投稿準備中であり,近日中に国際誌に投稿予定である。また、EGFR阻害剤セツキシマブについての口腔扁平上皮癌における作用の検討を行った。その結果,BRAK発現の消失していないHNSCCにおいては,セツキシマブのEGFR阻害効果を介したBRAKの遺伝子発現促進効果が認められた。しかし,BRAK発現の消失した細胞ではセツキシマブの遺伝子発現促進効果は見られなかった。これらの結果よりセツキシマブの効果にはBRAKの遺伝子発現消失の原因であるBRAK遺伝子のプロモータ領域のメチレーションが影響する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
現在までにファスジルのHNSCCに対する効果に関しては検討を行った。その結果ファスジルには口腔扁平上皮癌におけるBRAKの合成促進,遺伝子発現亢進を介した腫瘍発達抑制効果があることが確認された。これらの結果は現在論文執筆中である。しかしセツキシマブの効果に関して検討を行った結果,BRAKの遺伝子発現消失の原因であるプロモータ領域のメチレーションが効果に影響することが確認された。そこでBRAKプロモーター領域のメチレーションとセツキシマブの薬効の検討を優先して行っている。
セツキシマブの効果に関して,BRAKの遺伝子発現消失の原因であるプロモータ領域のメチレーションが効果に影響する可能性が示唆されたので,メチレーションによるセツキシマブの薬効への影響の検討を優先して行う。またファスジルとセツキシマブの併用に関しては,BRAK遺伝子の発現が確認されている細胞を用いて引き続き併用による影響の解析を行っていく。
論文の校閲と掲載費用が次年度に持ち越されたため差額が生じた。論文の校閲および掲載費用に充てる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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