研究課題/領域番号 |
25870843
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
氏家 優子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60588599)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 好中球エラスターゼ / シベレスタット / 歯周病 / 骨吸収 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
歯周病に於いては歯槽骨が吸収され、歯の動揺が進行することで歯の喪失へと至る。これまでに好中球エラスターゼが歯周病に及ぼす影響を研究してきた。本研究では特に好中球エラスターゼの阻害剤が歯槽骨吸収を始め、歯周組織破壊を抑制する効果について検討することを実験目的としている。 平成26年度にはマウスの脛骨から採取した骨髄細胞中に含まれるマクロファージを用いて、好中球エラスターゼが破骨細胞への分化にどのような影響を及ぼすのかについて好中球エラスターゼの阻害剤(シベレスタット)を用いて実験を行った。実際には、骨の吸収抑制に好中球エラスターゼ剤がどのように関与しているかについては、破骨細胞への分化を酵素活性で特異的に定量的・形態的に調べるTRAP assayとTRAP染色にて評価した。その結果、好中球エラスターゼ阻害剤が添加された群では、TRAP活性の減少とTRAP陽性細胞数の減少が認められた。これらの現象は好中球エラスターゼ阻害剤の濃度依存的に認められた。これらのことにより、好中球エラスターゼの阻害剤によってマクロファージから破骨細胞への分化が抑制されたことを示している。 また平成26年度に好中球エラスターゼがどのようにして破骨細胞の分化に影響を及ぼしたかを調べるため、破骨細胞に特異的に発現する遺伝子発現を好中球エラスターゼ阻害剤添加群と非添加群とで比較検討した。その結果、RANK, TRAP, Cathepsin Kの発現が好中球エラスターゼ阻害剤添加群にて明らかに減少していた。これらのことより、好中球エラスターゼ阻害剤が破骨細胞の分化に影響を及ぼしていることが、遺伝子レベルに於いても確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に既にファージのcell lineを用いて好中球エラスターゼの阻害剤が破骨細胞の分化に及ぼす影響についてTRAP assayとTRAP染色にて評価したが、この結果が今までに報告されていない興味深いものだったので、平成26年度には生体から採取した細胞で再確認を行った。この実験系は当初の予定には組み込まれていなかった。 また、好中球エラスターゼが影響を与えているであろう、破骨細胞に特異的な蛋白を限定するために遺伝子レベルでの検討を優先させたため、組織切片を用いての評価を行うに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
好中球エラスターゼが破骨細胞の増殖と分化を抑制することは今までの研究で明らかになってきているが、過去にこのようなことは報告されていないので、さらに確認を取るために破骨細胞の活性化も好中球エラスターゼが抑制するのかどうかを象牙質のスライス表面を破骨細胞が分解するのかを調べることであきらかにする。 また歯周病に罹患すると、実際に生体で好中球エラスターゼが集積するのか否か、またその集積は歯周組織のどこに現れるのかについて組織学的に調べる。さらにそれらの炎症反応は好中球エラスターゼ阻害剤によってどのような影響を受けるのかについても形態学的検討を行う。 さらには歯周病に罹患した歯周組織内において、骨吸収に関与する因子が好中球エラスターゼの阻害剤添加によって、生体内でどれぐらい抑えられるのかどうかについても免疫染色などを用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の内容を方向転換し、前年度使用していた試薬など、そのまま転用できたため試薬の購入に費用がかからなかったため。 また予定していた組織切片の評価に用いる抗体を購入しなかったので、予定よりも試薬に費用がかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析(RT-PCR)に用いるキットや試薬。また細胞培養に用いる培養関連試薬と破骨細胞へ分化させる実験系に必要な試薬。さらにはマウス骨髄細胞が必要なため、その動物実験に関わる費用。組織学的評価実験に用いるための抗体やその関連試薬に充当する予定。さらには、好中球エラスターゼで刺激した細胞の細胞増殖能や石灰化能を調べるためのマイクロプレートリーダーの購入に充当予定。
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